①円形脱毛症の症状とは
円形脱毛症は、頭部に円形やまだら状の脱毛斑が現れる脱毛症の一種です。
円形脱毛症の症状が現れると、
10円玉ほどの円形の薄毛エリアができることが一般的です。
これにより「10円ハゲ」などと呼ばれることもあります。
興味深いことに、これが頭髪だけでなく、眉毛や体毛の一部でも発生することがあります。
また、症状が進行すると頭部全体に広がることもあります。
円形脱毛症は後天性の脱毛症で、原因ははっきりとはわかっていません。
毛包に対する自己免疫が一因と考えられており、ストレスや感染症などが引き金となることがあります。
症状が現れた場合は、早めに専門医の診断を受け、適切な治療を開始することが重要です。
②円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因について、従来は主にストレスが関与するとされていましたが、
最新の医学知識では、自己免疫機能の異常が主な原因とされています。
この疾患では、免疫機能が何らかの理由で乱れ、髪の毛を生成する毛包の正常な組織まで攻撃すると考えられています。
- 自己免疫機序説
毛包組織に対する自己免疫機序が円形脱毛症の主な原因と考えられています。
免疫機能の異常により、毛包の正常な組織が攻撃され、脱毛斑が生じます。
肉体的ストレスや感染症などが引き金となることがあります。 - 心的ストレス説
かつては円形脱毛症の原因としてストレスが指摘されましたが、現在では否定的な見解も多くなっています。
しかし、ストレスが免疫機能異常のトリガーとなり得るため、無関係ではないとされています。 - 遺伝説
円形脱毛症と遺伝の関連性は解明されていない部分がありますが、
一親等内に発症した家族歴がある場合、発症率が約10倍に上がるとされています。
一卵性双生児の場合、症状の一致率が高く、遺伝的要因が関与している可能性が高まっています。 - アトピー性疾患説
円形脱毛症患者の約4割がアトピー素因を持っている報告があります。
アトピー素因が何らかの形で関与している可能性が示唆されていますが、具体的な関連性はまだ解明されていません。
③円形脱毛症の種類
円形脱毛症とAGA(男性型脱毛症)は、発症の原因や対象、脱毛の状態において異なる特徴があります。
- 発症対象と原因:
- AGA(男性型脱毛症): 主に成人男性に発症し、活性型男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)の影響が主な原因です。
活性型男性ホルモンが毛包付近で5αリダクターゼにより生成されると、脱毛シグナルが出ることにより薄毛となります。
思春期以降に発症することが一般的で、年齢とともに発症率が上昇します。 - 円形脱毛症: 男性だけでなく、女性や子どもも発症します。
自己免疫機能の異常が主な原因と考えられており、全年齢層で発症しうります。
- AGA(男性型脱毛症): 主に成人男性に発症し、活性型男性ホルモン(ジヒドロテストステロン)の影響が主な原因です。
- 脱毛の状態:
- AGA: 髪の毛のヘアサイクルの短縮によって徐々に細くなったり(軟毛化現象)、脱毛が増えたりします。
急激な抜け毛は見られにくく、生え際や後頭部など特定の部位での発症率が高いです。 - 円形脱毛症: 急に髪の毛が円形や楕円形に抜け落ち、頭皮が露出する特徴があります。
軟毛化する前兆がないため、抜け毛が急激に起こります。
- AGA: 髪の毛のヘアサイクルの短縮によって徐々に細くなったり(軟毛化現象)、脱毛が増えたりします。
- 自覚症状:
- AGA: 自覚症状は薄毛の進行によるものであり、急激な脱毛の自覚症状はほとんどありません。
- 円形脱毛症: 自覚症状がないことも多いですが、脱毛前や発症時にかゆみや淡い紅斑、爪の変化(小さな凹みなど)が見られる場合があります。
④円形脱毛症の治療について
円形脱毛症の治療に関しては、新薬も開発されており、
年々研究が進んできております。
以下、治療法を列挙していきます。
・JAK阻害薬(ヤヌキナーゼ阻害薬)
円形脱毛症が脱毛班をきたす原因と考えられている、
「自己免疫応答による毛包への攻撃」を抑える薬剤で、
重症の円形脱毛症で保険適用となる新しい飲み薬です。
・15歳以上
・頭部全体の50%以上が脱毛
・6か月以上発毛が診られない
上記が保険適用の条件となります。
内服により毛包が攻撃を受けなくなり、発毛が期待できます。
円形脱毛症の原因を直接断つことができれば、脱毛が止まる可能性があるので、
重症円形脱毛症でお悩みの方は、皮膚科で本薬のお話を聞いてみることをお勧めします。
・セファランチン
円形脱毛症や粃糠性脱毛症の治療で、よく使用されるお薬です。
・抗アレルギー作用
・末梢循環障害改善
・造血機能の回復
上記効果があるとされていますが、
セファランチン単体では、円形脱毛症への効果はそこまで強くありません。
・グリチロン(グリチルリチン酸)
・抗アレルギー作用
・抗炎症作用
・肝機能改善
上記効果があり、円形脱毛症の治療によく使用されます。
服用しすぎると偽性アルドステロン血症をきたすことがあるので、
内服量は適正の量を守る必要があります。
・ステロイド内服
ステロイドは炎症や免疫機能を抑える効果があるので、
毛包に集まっている炎症細胞の働きを抑えることから、円形脱毛症に有効です。
ただし、ステロイドの使用には以下の副作用もあるので注意が必要です。
・易感染性
・糖尿病
・消化管潰瘍
・中心性肥満
・動脈硬化
・高脂血症
・精神症状
・フロジン(カルプロニウム塩化物水和物)外用
末梢血管拡張作用や発毛促進作用があります。
AGAの治療薬としても推奨度が高く、尋常性白斑の治療薬としても使用されます。
・ステロイド外用
ステロイド外用療法は、ステロイド剤を頭皮に直接塗布する治療法です。
軽度な単発型や多発型に適用されますが、全頭型や汎発型には向いていません。
1日1〜2回の頻度で患部に塗布すると、中症程度の改善が報告されています。
・局所免疫療法 (SADBE療法)
局所免疫療法では、皮膚にかぶれを引き起こす物質(SADBE、DPCPなど)を塗布し、発毛を促進します。
多発型や全頭型に対して推奨されますが、年齢に関係なく利用可能です。
効果には個人差があり、副作用には頭痛やじんましん、色素沈着があるため注意が必要です。
週1回〜月1回程度の頻度で施術され、治療の経過に合わせて調整されます。
・ステロイドの局所注射
この治療法では、ステロイドを皮下脂肪層に直接注射します。
単発型や多発型の治療に用いられ、通院時に施術可能で比較的安全性が高いとされています。
発毛効果は確立していないものの、研究報告では改善が見られたとされています。
1カ月に1回程度の投与が一般的です。
・光線療法(ナローバンドUVB、エキシマライト)
紫外線の一種であるナローバンドUVBを当てることで、
炎症性のリンパ球を抑制し、制御性リンパ球を増加することで、どの病型の円形脱毛症にも有効とされます。
副作用も少ない治療であり、2020年より保険適用の治療法となっております。
・液体窒素凍結療法
脱毛班部に液体窒素をかけて、人工的に凍傷を起こし、
毛包部における炎症を鎮静化する作用があるとされています。
6割程度の患者様に効果があったとの症例集積研究結果がある治療法になります。
・かつらの使用
かつらの使用は直接的な治療法ではありませんが、
頭部を外傷や紫外線から守り、心理的なサポートとしてQOL向上に寄与します。
国内では保険対象外であり、かつらが医療用具として扱われる国もあります。
⑤円形脱毛症とAGA治療について
AGA(男性型脱毛症)の治療に用いられるミノキシジルは、円形脱毛症に対しては十分な効果が確認されていません。
これは、円形脱毛症が主に自己免疫の異常から発症する一方で、
AGAは男性ホルモンに由来するものであり、両者の根本的な原因が異なることが影響しています。
ただし、ごく少数の例では、ミノキシジルが円形脱毛症の改善に寄与するとの国内の報告が存在します。
そのため、単発型や多発型の症例において併用療法の一環として検討されることもあります。
記事監修
「神奈川・湘南・鎌倉の女性薄毛(FAGA)はルートへ」
院長 清水弘太郎
プロフィール
略歴
三重大学 医学部医学科卒業
桑名市総合医療センター 初期臨床研修 修了
三重大学病院 さいたま市立病院 形成外科 勤務
大手AGAクリニックA 勤務
大手AGAクリニックB 勤務
専門医・所属学会
日本毛髪科学協会 毛髪診断士
厚生労働省 麻酔科標榜医
日本形成外科学会 正会員