はじめに
「ミノキなら生える」
これは某有名CMのキャッチコピーですが、薄毛治療にミノキシジルが使われ始めてからかなりの年月が経っていながらも、まだミノキシジルは薄毛治療の第一線で使用されています。
今回はこのミノキシジルというお薬に関して、詳しく説明していきますので、「これから薄毛治療を開始しようかな…」と思っている方は最後まで見て参考にしていただけると幸いにございます。
ミノキシジルとは
ミノキシジル(2,4-ピリミジンジアミン、6-(1-ピペリジニル)-、3-オキシド)はもともと難治性高血圧の治療薬として1960年代に開発されましたが、発毛効果が副作用として確認されたため、現在では発毛治療薬として広く使用されています。ミノキシジルは、毛髪の成長を促進し、毛髪の成長期を長くすることで、薄毛の改善に役立ちます。また、毛根への血流を改善することで、毛髪の成長に必要な酸素や栄養素を供給し、発毛を促進する効果も期待できます。
ミノキシジルの体へ作用する仕組み
先ほど、ミノキシジルは毛の成長を促進したり、血流を改善する効果があると述べましたが、その効果の仕組みについて以下詳しくまとめました。論文レベルで言われている薬理作用まで含めるとたくさんの効果があると考えられており、ミノキシジルにはかなりの可能性が秘められていると言ってもいいでしょう。
1. 血管拡張
ミノキシジルの主な作用は、
アデノシン三リン酸(ATP)により細胞膜のカリウムチャネル開口で、細胞膜の過分極を起こします。この作用により頭皮の血管が広がるので、髪の毛の心臓部でもある毛包への血流が増加し、発毛が促進されます。
2. 毛の成長期の延長
ミノキシジルは、ヘアサイクルの成長期を延長すると考えられています。これは、毛髪が活発な成長期に長くとどまることを意味し、より長く太い毛髪につながる可能性があります。
3. 毛包の成長を刺激
研究によると、ミノキシジルは毛包の機能と成長に重要な毛乳頭細胞の増殖を刺激することが示唆されています。これにより、小さくなった毛包を大きくすることができます。
4. 成長因子の増加
ミノキシジルは、新しい血管を作るのを促進する血管内皮成長因子(VEGF)を含む、頭皮の様々な成長因子を増加させることが示されています。これは、毛包の成長の改善に寄与する可能性があります。
5. 男性ホルモンの調節
ミノキシジルの主なメカニズムではありませんが、いくつかの研究では、ミノキシジルには穏やかな抗アンドロゲン作用があることが示唆されています。ミノキシジルは、テストステロンを男性型脱毛症に関与するホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)に変換する5αリダクターゼという酵素を阻害する可能性があります。
6. プロスタグランジン・エンドペルオキシド合成酵素-1の活性化
この酵素はプロスタグランジンの合成に関与しており、髪の成長に影響を与えることが知られています。ミノキシジルがこの酵素を活性化することにより、発毛効果に寄与している可能性があります。
内服薬と外用薬の違い
ミノキシジルは、内服薬と外用薬の2種類があります。内服薬は、経口摂取することで全身の毛根の毛乳頭細胞に作用し、発毛を促進します。
外用薬は、頭皮に直接塗布することで、局所的に発毛を促進します。内服薬は、外用薬に比べて効果が早く現れる傾向がありますが、その分副作用も出やすくなります。外用薬は、内服薬に比べて副作用のリスクが低いですが、出る効果が弱かったりします。
ミノキシジルの発毛効果
ミノキシジルの発毛促進効果
ミノキシジルは、毛髪を促進し、毛髪の成長期を長くすることで、薄毛の改善に役立ちます。また、毛根への血流を改善することで、毛髪の成長に必要な栄養素を供給し、発毛を促進する効果も期待できます。ミノキシジルは、男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症(FAGA)の治療に効果があります。円形脱毛症の治療に使用されることもありますが、円形脱毛症の病態である毛包の破壊にミノキシジルの発毛効果が負けてしまう場合が多いので、当院では積極的には使用しておりません。論文では円形脱毛症にもオフラベル用途として記載あるものもあるので以下転記します。
- 円形脱毛症:ミノキシジルは、円形脱毛症の単独治療として、またはコルチコステロイドなどの他の薬と併用すると、良好な臨床反応を引き出す能力を示しています。
- 化学療法誘発性脱毛症:この場合、ミノキシジルは脱毛を減らし、髪の再生プロセスを早める能力を示しています。
- 植毛:脱毛は、毛髪移植後の一般的な観察です。ミノキシジルは、患者の脱毛を減らすために、植毛の前後に使用できます。ただし、過剰な出血を防ぐために、毛髪移植の3日前に治療を一時的に中断する必要があります。
- 瘢痕性脱毛症:ミノキシジルは、この状態に抗線維症効果があるという証拠を示しています。その結果、局所ミノキシジル治療は、皮膚病の初期段階で実行可能な治療オプションであり、頭皮の火傷に起因するものなどの瘢痕性脱毛症につながる可能性があります。
- 連珠毛:連珠毛とは太い部分と細い部分が交互にくる毛ですが、ミノキシジルは連珠毛患者で成長期に入る毛包の同期を誘導する効果があります。
- 遺伝性脱毛症または低毛症:ミノキシジルは、低毛症で毛根の太さを太くすることで有益な効果を与えます。
ミノキシジルの効果の現れる時期
ミノキシジルの効果を実感するには、個人差は大きいですが少なくとも通常3ヶ月から6ヶ月程度の期間がかかります。これは髪の毛が1ヶ月に1cmしか伸びないというところと、ミノキシジルによってヘアサイクルが整うまで少し時間がかかるところによります。論文でもミノキシジルの効果が出る時期に関して以下のように言われております。
ミノキシジルの初期結果は、治療開始から約8週間後に明らかになり、最大効果は約4ヶ月で現れます。ミノキシジルは、血管平滑筋と毛包に存在するカリウムチャネルに影響を与えます[4]。
ミノキシジルの使用方法
ミノキシジル内服薬の使用方法
内服薬は、決められた用量を守って毎日1回服用する必要があります。内服薬は、食後または就寝前に服用するのが一般的です。女性の場合だと1日2.5mg、男性の場合だと1日5mgの量を基本として、体重、年齢、基礎疾患を加味して内服する量を調整します。ミノキシジルは投与してみて出現する効果の大小を医師が判断して、内服する量の調整を行なって効果の最大化を狙っていきます。
ミノキシジル外用薬の適切な使い方
ミノキシジル外用薬は、1987年にAGAを治療するためにミノキシジルの局所製剤が開発され、最初は男性を対象とし、後に女性を含むように使用を拡大しました。
外用薬の使い方としては、清潔な頭皮に適量を塗り、軽くマッサージするようにします。外用薬は、1日1回または2回、頭皮に塗布します。ドラッグストアで購入できるミノキシジル外用薬のミノキシジル含有量は5%が上限なので、5%で効果が足りない人は7%以上のミノキシジル外用薬を使用する必要があります。参考までに当院では2%から15%のミノキシジル外用薬を取り扱っています。外用薬を塗布する最適量は、製品によって異なりますので、製品の説明書をよく読んでから使用してください。
ミノキシジルの副作用
ミノキシジル内服薬の副作用
ミノキシジル内服薬では、低血圧や動悸などの循環器系の問題が生じることがあります。また、血管が拡張することによって、むくみ(浮腫)などの副作用も報告されています。また、初期脱毛と呼ばれる、一時的に脱毛が進む現象が起こる場合もあります。初期脱毛は、ミノキシジルが毛髪の成長サイクルを促進することで起こる現象であり、通常は数週間〜2ヶ月で収まります。ミノキシジル内服薬の効果は全身の毛根に作用するので、多毛症と呼ばれる全身の毛が太くなったり増えたりする現象も見られます。この多毛症はミノキシジル内服患者の5分の1の確率で見られる[1][2]とされ、多毛症が出現した時には全身脱毛を行うことで、いわゆるムダ毛の箇所の毛根が死滅するのでムダ毛が生えてこなくなります。
ミノキシジル外用薬の副作用
ミノキシジル外用薬では、皮膚のかぶれ(湿疹)が発生することがあります。これはミノキシジルがアレルギーを起こすというよりは、ミノキシジル外用薬に含まれているプロピレングリコールが頭皮のかぶれの原因になっている場合が多いと言われています。プロピレングリコールによるアレルギー性接触性皮膚炎の場合は発泡製剤としてのミノキシジル外用薬を使用すれば、プロピレングリコールを含まないため代替治療薬になります。
外用薬は、内服薬に比べて全身症状などの副作用のリスクは低いですが、副作用が出た場合は、使用を中止し、医師に相談してください。
ミノキシジルの薬理効果・薬物動態
ミノキシジルの正確な作用機序は、まだ十分に理解されていませんが以下のことがわかっています。
人間の頭皮のスルホトランスフェラーゼ酵素は、ミノキシジルを活性型のミノキシジル硫酸に変換します。一人一人のスルホトランスフェラーゼ活性の個人差が、使用したミノキシジル外用薬の有効性に影響を与え、治療効果の差につながる可能性があります[3] 。
また、ミノキシジルの薬物動態に関しては以下の通りです。
吸収:ミノキシジルは95%の割合で消化管から吸収され、薬物は最初の1時間以内にピークレベルを達成します。逆に、局所ミノキシジルのわずか1.4%が皮膚を介して吸収されます。[5]
ミノキシジルの皮膚に塗布した後、1時間以内に約50%が皮膚より吸収され、4時間後には75%が吸収されます。
分布:ミノキシジルは血漿タンパク質に結合親和性を示さない。この薬は広範囲に分布しており、分布量は2.8〜3.3 L/kgの範囲です。
代謝:ミノキシジルは、共役、硫酸化、ヒドロキシル化プロセスによって代謝されます。結果として生じる代謝産物は一般的に親薬よりも低い薬理学的活性を示します。特に、前述のように、外用ミノキシジルは、スルホトランスフェラーゼ酵素によって毛包内で代謝され、硫酸ミノキシジルの形成につながります。[6]
排泄:ミノキシジルの半減期は約3~4時間ですが、薬の低血圧への影響は最大72時間持続する可能性があります。特に、ミノキシジルとその代謝産物の排泄は主に腎臓を介して行われます。[7]
ミノキシジルと他の薬物の相互作用
- 全身性シクロスポリンは、局所ミノキシジルと組み合わせると、多毛症などの副作用を悪化させる可能性があります。特に、局所ミノキシジルを2ヶ月間中止した後、多毛症の症状は有意に改善した。[8]
- 低用量のアスピリン(痛み止めや胃薬として使用されます)とミノキシジルの併用は、ミノキシジル外用薬の有効性を低下させる可能性があります。この有効性の低下は、人間の髪のスルホトランスフェラーゼ酵素に対する低用量アスピリンの抑制効果が原因です。[9]
- グアネチジンとミノキシジルの併用は重度の低血圧を引き起こす可能性があります。[10]
ミノキシジルを使用できない人
禁忌事項
妊娠中や授乳中の女性、血圧が不安定な人はミノキシジルの使用を避けるべきです。また、心臓病や肝臓病などの持病がある人は、医師に相談してから使用してください。
過去にアレルギーを持つ人
ミノキシジルに対してアレルギーを持つ人は使用を避けてください。ミノキシジルは、アレルギー反応を起こす可能性があります。過去にミノキシジルやその他の薬剤でアレルギー反応を起こしたことがある人は、医師に相談してから使用してください。
医師の指示に従う
使用に関しては必ず医師の指示に従う必要があります。ミノキシジルは、副作用のリスクがあるため、医師の指示に従って使用することが大切です。
まとめ
ミノキシジルは、発毛を促進する効果が期待できる薬剤ですが、副作用のリスクもあります。ミノキシジルを使用する際は、医師と相談し、適切な使用方法を守ることが大切です。また、ミノキシジルは、すべての薄毛に効果があるわけではありません。ミノキシジルが効果を発揮するかどうかは、個人の体質や薄毛の原因によって異なります。ミノキシジルを使用する前に、医師に相談し、自分の薄毛の原因や状態を理解することが重要です。
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記事監修
「神奈川・湘南・鎌倉の女性薄毛(FAGA)はルートへ」
院長 清水弘太郎
プロフィール
略歴
三重大学 医学部医学科卒業
桑名市総合医療センター 初期臨床研修 修了
三重大学病院 さいたま市立病院 形成外科 勤務
大手AGAクリニックA 勤務
大手AGAクリニックB 勤務
専門医・所属学会
日本毛髪科学協会 毛髪診断士
厚生労働省 麻酔科標榜医
日本形成外科学会 正会員