この記事のポイント
- 産後の抜け毛は病気ではなく、自然な現象
- 産後2〜3ヶ月で始まり、4〜6ヶ月がピーク
- 主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少
- 栄養バランスと休息を意識することで回復をサポートできる
- 産後1年以上続く場合や回復を早めたい場合は受診を
産後の抜け毛は多くのママが経験する自然な現象
産後の抜け毛は「産後脱毛症」「分娩後脱毛症」とも呼ばれ、出産を経験した多くの女性が経験する症状です。シャンプー時に排水溝が詰まるほど髪が抜けたり、枕やブラシに大量の髪がついたりして、驚かれる方も少なくありません。
通常、髪は1日50〜100本程度抜けますが、産後は200〜300本近く抜けることもあります。「このまま薄毛になるのでは」と不安になるかもしれませんが、産後の抜け毛は病気ではなく、ホルモン変化に伴う一時的な現象です。
ほとんどの場合、産後1年以内に自然と回復します。
産後の抜け毛の特徴と症状
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 発症時期 | 出産後2〜3ヶ月頃から |
| 抜け毛の量 | 1日200〜300本程度 |
| 目立つ部位 | 分け目、生え際、頭頂部 |
| 髪質の変化 | 細くなる、ハリ・コシの低下 |
| 回復期間 | 産後6ヶ月〜1年程度 |
分け目が広がって見える、髪を結んだときに毛束が細く感じるなどの変化に気づく方が多いです。
注意が必要なケース
- 産後1年程度経っても改善しない
- 円形に脱毛している部分がある
- 頭皮の赤み・かゆみ・フケを伴う
これらがある場合は別の原因の可能性があるため、早めにご相談ください。
産後の抜け毛はいつからいつまで続く?
出産後2〜3ヶ月で抜け毛が始まる
個人差はありますが、産後の抜け毛は出産直後ではなく、産後2〜3ヶ月頃から始まることが多いです。出産後すぐに抜け毛が増えないのは、ホルモンの変化が髪に影響するまでにタイムラグがあるためです。
髪の毛には「ヘアサイクル(毛周期)」があり、成長期から休止期に移行した髪が実際に抜け落ちるまでには2〜3ヶ月かかります。そのため、出産直後は変化を感じなくても、しばらく経ってから急に抜け毛が増えたと感じる方がほとんどです。
産後4〜6ヶ月が抜け毛のピーク
産後の抜け毛がもっとも多くなるのは、産後4〜6ヶ月頃です。この時期は、妊娠中に抜けずに残っていた髪が一斉に抜け落ちるため、抜け毛の量に驚く方も多いです。
シャンプーのたびに排水溝がすぐ詰まる、床に落ちた髪を1日に何度も掃除するなど、目に見える変化が大きくなります。
産後半年〜1年で自然に回復する
多くの場合、産後6ヶ月〜1年程度で抜け毛は落ち着き、髪のボリュームも徐々に戻ってきます。
新しい髪が生え始めると、生え際に短い毛(アホ毛)が目立つようになりますが、これは回復のサインです。
ただし、回復のスピードには個人差があります。産後1年を過ぎても改善しない場合は、一度クリニックへご相談ください。
産後の抜け毛が起こる原因はホルモンバランスの変化
産後の抜け毛の主な原因は、妊娠・出産に伴う女性ホルモンの急激な変化です。ここでは、そのメカニズムをわかりやすく解説します。
妊娠中は女性ホルモンの増加で髪が抜けにくくなる
妊娠中は、女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌量が大幅に増加します。特にエストロゲンには髪の成長を促進し、成長期を延長させる働きがあります。
そのため、妊娠中は本来抜けるはずだった髪がそのまま残り、「髪のボリュームが増えた」「髪にツヤが出た」と感じる方もいます。
出産後にホルモンが急減し、一気に抜け毛が起こる
出産後は、妊娠中に増加していたエストロゲンとプロゲステロンが急激に減少し、妊娠前の状態に戻ります。すると、妊娠中に抜けずに残っていた髪が一斉に抜け落ちます。

これが産後の抜け毛が急増する理由です。妊娠中に「貯まっていた」髪が一気に抜けるため、通常よりも抜け毛が多く感じられます。
また、授乳中は母乳の分泌を促すホルモン「プロラクチン」が増加します。プロラクチンにはエストロゲンの分泌を抑える作用があるため、授乳期間中は髪の回復がやや遅れることがあります。
ヘアサイクル(毛周期)の仕組み
髪の毛には「ヘアサイクル」と呼ばれる生え変わりの周期があります。

| 時期 | 期間 | 状態 |
|---|---|---|
| 成長期 | 2〜6年 | 髪が成長し続ける |
| 退行期 | 2〜3週間 | 成長が止まり、毛根が縮小する |
| 休止期 | 2〜3ヶ月 | 髪が抜け落ち、次の髪が生える準備をする |
通常、髪の約85〜90%が成長期にあり、1日50〜100本程度が自然に抜け落ちています。
妊娠中はエストロゲンの作用で成長期が延長され、休止期に移行する髪が減少します。しかし出産後、ホルモンが急減すると多くの髪が一斉に休止期へ移行し、2〜3ヶ月後にまとめて抜け落ちます。
これが産後2〜3ヶ月から抜け毛が始まる理由です。
産後の抜け毛を悪化させる要因
産後の抜け毛はホルモン変化による自然な現象ですが、生活環境や体調によって症状が悪化することがあります。以下の要因に心当たりがある場合は、できる範囲で改善を心がけましょう。
育児によるストレスや睡眠不足
産後は慣れない育児や夜間の授乳で、十分な睡眠が取れない日々が続きます。慢性的な睡眠不足やストレスは自律神経のバランスを乱し、頭皮の血行不良を引き起こします。
血流が悪くなると、髪の成長に必要な栄養が毛根に届きにくくなり、抜け毛が悪化する原因となります。
また、髪の成長を促す成長ホルモンは、深い睡眠中に多く分泌されます。睡眠の質が低下すると、髪の回復も遅れやすくなります。
授乳や過度なダイエットによる栄養不足
授乳中は母乳を通じて赤ちゃんに栄養を届けるため、母体は多くの栄養を消費します。さらに、産後の体型を早く戻そうと過度なダイエットをすると、髪の成長に必要な栄養が不足しがちです。
髪の主成分であるケラチンはタンパク質から作られます。タンパク質、鉄分、亜鉛、ビタミンB群などが不足すると、髪が細くなったり、抜け毛が増えたりする原因になります。
頭皮環境の悪化
産後はホルモンバランスの変化により、肌質が変わることがあります。頭皮も同様で、以前は問題なかったシャンプーが合わなくなり、乾燥やかゆみ、フケなどのトラブルが起こることがあります。
また、育児に追われてシャンプーが十分にできなかったり、髪を乾かす時間が取れなかったりすると、頭皮環境が悪化し、抜け毛を悪化させる要因になります。
自宅でできる3つの産後の抜け毛対策
産後の抜け毛は自然に回復することがほとんどですが、日々のケアで回復をサポートすることができます。育児で忙しい中でも取り入れやすい対策をご紹介します。
1. 髪に良い栄養バランスの食事を心がける
髪の主成分であるケラチンは、タンパク質から作られます。授乳中は特に栄養が不足しがちなので、意識して摂取しましょう。
| 栄養素 | 働き | 多く含まれる食品 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 髪の主成分ケラチンの材料 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
| 鉄分 | 毛根に酸素を届ける | レバー、赤身肉、ほうれん草 |
| 亜鉛 | ケラチンの合成を助ける | 牡蠣、ナッツ、大豆製品 |
| ビタミンB群 | 細胞の代謝を促進 | 豚肉、玄米、かつお |
育児中は自分の食事まで手が回らない日も多いと思います。そんなときは、コンビニのサラダチキンやゆで卵、納豆など、調理不要で食べられるものを活用してください。
一食一食を完璧にする必要はありません。
食べられるときに、タンパク質を意識して口にするだけでも髪への栄養補給につながります。
2. 質の良い睡眠をとる
髪の成長を促す成長ホルモンは、深い睡眠中に多く分泌されます。
夜間の授乳があると、まとまった睡眠を取ることは難しいですよね。そんなときは、赤ちゃんが寝ているタイミングで一緒に横になってください。「家事を終わらせてから」と思いがちですが、15分でも30分でも、体を休めることを優先して大丈夫です。
寝る前にスマホを見る時間を少し減らす、部屋を暗くするなど、短い睡眠でも深く眠れる工夫も効果的です。
3. 頭皮にやさしいシャンプーを選ぶ
産後はホルモンの影響で頭皮が敏感になることがあります。今まで使っていたシャンプーが急に合わなくなることも珍しくありません。
かゆみやフケが気になり始めたら、アミノ酸系やベタイン系など低刺激のシャンプーに切り替えてみてください。
赤ちゃんが泣いていて、髪を乾かす時間がないこともあると思います。そんな日は、タオルドライをしっかりするだけでも頭皮の蒸れを防げます。できる範囲で続けていきましょう。
産後の抜け毛が治らない場合は治療も選択肢に
産後の抜け毛は多くの場合、1年以内に自然と回復します。しかし、なかには回復が遅れるケースや、別の脱毛症が隠れている場合もあります。
クリニックを受診すべき目安
以下に当てはまる場合は、一度クリニックへの相談をおすすめします。
- 産後1年以上経っても抜け毛が減らない
- 明らかに地肌が透けて見えるようになった
- 円形に髪が抜けている部分がある
- 頭皮に赤み、かゆみ、フケがひどい
- 抜け毛以外に、倦怠感や体重の急激な変化がある
産後1年を過ぎても改善しない場合、ホルモンバランス以外の原因が関係している可能性があります。
甲状腺の異常や貧血、FAGA(女性男性型脱毛症)など、別の疾患が隠れていることもあるため、早めの受診が大切です。
産後の抜け毛に対応できる治療法
クリニックでは、症状や原因に応じてさまざまな治療法を提案できます。
| 治療法 | 特徴 | 備考 |
|---|---|---|
| 外用薬(ミノキシジル) | 頭皮に塗布し、毛根の血流を促進して発毛をサポート | 授乳終了後に検討 |
| 内服薬(パントガール等) | 髪の成長に必要な栄養素を補給 | 授乳終了後に検討 |
| 内服薬(スピロノラクトン) | ホルモンバランスを整え、抜け毛を抑制 | 授乳終了後に検討 |
授乳中は使用できる薬剤が限られるため、治療を始めるタイミングは医師と相談しながら決めていきます。
「まだ授乳中だから」と遠慮せず、まずは相談だけでもお越しください。現状を把握しておくことで、授乳終了後にスムーズに治療を始められます。
産後の抜け毛に関するよくある質問
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授乳中でも使える育毛剤はありますか?
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市販の育毛剤の中には、授乳中でも使用できるものがあります。ただし、成分によっては母乳への影響が懸念されるものもあるため、購入前に成分表示を確認するか、医師・薬剤師に相談することをおすすめします。
なお、医療機関で処方されるミノキシジル外用薬や内服薬は、授乳中は使用を控えるのが一般的です。治療を希望される場合は、授乳終了後に改めてご相談ください。
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産後の抜け毛とFAGA(女性男性型脱毛症)の違いは何ですか?
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産後の抜け毛とFAGAは、原因も経過も異なります。
産後の抜け毛 FAGA 原因 出産後のホルモン変化 加齢や遺伝によるホルモンバランスの変化 発症時期 産後2〜3ヶ月から 30代後半〜更年期以降に多い 経過 一時的(産後1年程度で回復) 進行性(治療しないと徐々に悪化) 治療の必要性 多くの場合、自然に回復 早期治療が重要
まとめ
まとめ
- 産後の抜け毛は病気ではなく、一時的な症状
- 主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少
- 産後2〜3ヶ月で始まり、4〜6ヶ月がピーク
- 睡眠不足、栄養不足、ストレスは悪化要因になる
- バランスの良い食事と休息を心がけることが大切
- 産後1年以上続く場合は、別の原因の可能性があるため受診を
抜け毛がひどいと「このまま元に戻らないのでは」と不安になるかもしれません。しかし、産後の抜け毛で悩んでいるのはあなただけではありません。多くのママが同じ経験をして、そして回復しています。
それでも不安が消えない場合や、産後1年を過ぎても改善しない場合は、一人で抱え込まず、クリニックにご相談ください。当院では、授乳中の方も含めて、お一人おひとりの状況に合わせたアドバイスや治療の提案をしています。
