脂漏性皮膚炎とは
脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い部位に発症する慢性の皮膚炎です。
多くの場合、頭皮や顔面、胸部上部に発症します。
実は人間の皮膚には、皮膚を健康に保つ役割の常在菌が健康な人でもいて、その数は100億以上とも言われます。
頭皮は皮脂を分泌することで乾燥を防ぐ機能が備わっていますが、その皮脂の分泌が多くなりすぎると、常在菌のバランスが崩れてしまいます。
常在菌は皮脂をエサにして繁殖しますが、この常在菌が増えすぎてしまうと頭皮が炎症を起こしてしまい、「脂漏性皮膚炎」を発症することがあります。
脂漏性皮膚炎になると、患部は赤みを帯び、やや黄色味を帯びた湿り気があるフケ、または乾燥した鱗のようなフケが出ます。
脂漏性皮膚炎の原因
マラセチア菌の関与
この、脂漏性皮膚炎はマラセチア菌というカビの1種である常在菌が増殖することによって起こります。
マラセチア菌は、通常は皮膚に存在する常在菌ですが、皮脂の分泌量が増加したりすると過剰に増殖し、炎症を引き起こすことがあります。
他にも、ビタミンB2、B6などの代謝異常、入浴や洗顔の不足、ストレス、寝不足、ホルモンの乱れなどの要因が関連しているといわれています。
マラセチアが皮脂に含まれる成分「トリグリセド」を遊離脂肪酸へと分解し、その遊離脂肪酸による皮膚への刺激が、皮膚炎の原因になっていると考えられています。
皮脂分泌の過剰
ホルモンバランスの乱れ、ストレス、食生活の乱れ、睡眠不足などによって、皮脂の分泌が過剰になることがあります。
皮脂はマラセチア菌の栄養源となるため、過剰な皮脂分泌はマラセチア菌の増殖を促進し、脂漏性皮膚炎の発症リスクを高めます。
成人タイプの脂漏性皮膚炎は、思春期以降の男性におこりますが、これは皮脂の分泌を促進する男性ホルモン(アンドロゲンなど)の影響が関係していると考えられております。
免疫力の低下
免疫力が低下すると、マラセチア菌などの真菌が繁殖しやすくなり、脂漏性皮膚炎を発症しやすくなります。ストレス、睡眠不足、栄養不足、慢性的な疲労などによって免疫力が低下することがあります。
脂漏性皮膚炎の症状
かゆみと炎症
脂漏性皮膚炎の最も一般的な症状は、かゆみと炎症です。かゆみは、特に夜間に強くなることが多く、患部を掻きむしることで炎症が悪化し、さらに強い痒みを引き起こす悪循環に陥ることがあります。炎症は、赤み、腫れ、熱感などを伴い、重症化すると皮膚がはがれ落ちることもあります。
鱗屑(フケの一種)
脂漏性皮膚炎では、鱗屑(※りんせつと読みます)と呼ばれるフケ状のものが発生します。
頭皮に発生した場合、大量のフケが落ちることがあります。顔面や胸部などにも鱗屑が見られることがあります。
皮膚の荒れ
持続的な炎症により、皮膚が荒れたり、痛みを伴うことがあります。特に、顔面や頭皮の脂漏性皮膚炎では、皮膚の乾燥やひび割れなどが起こりやすく、見た目の悪化だけでなく、日常生活にも支障をきたすことがあります。
脂漏性皮膚炎の治療法
抗真菌薬の使用
脂漏性皮膚炎の治療には、抗真菌薬が用いられます。
抗真菌薬は、マラセチア菌の増殖を抑える効果があり、外用薬と内服薬があります。
外用薬は、クリームやローションなどの形で患部に塗布します。
内服薬は、症状が重症な場合や、外用薬が効果を示さない場合に用いられます。
シャンプーの使用
頭皮の脂漏性皮膚炎には、抗真菌成分を含むシャンプーを使用することが有効です。
抗真菌成分として有名なものとしてはケトコナゾールであり、抗真菌成分入ったシャンプーを使用してマラセチアの量をコントロールして治療します。
抗真菌成分配合のシャンプーは、市販薬でも購入できますが、症状が改善しない場合は、皮膚科を受診して適切なシャンプーを処方してもらうことをおすすめします。
なお、弊院でも抗真菌成分配合のシャンプーを購入することができますので、気になる方はお聞きくださいませ。
適切なスキンケア
乳児型の脂漏性皮膚炎の大半は一過的なものですので、適切なスキンケアによって生後8~12か月ごろには自然治癒することが多いです。
生活習慣の見直し
脂漏性皮膚炎の治療には、生活習慣の見直しも重要です。バランスの取れた食事を心がけ、十分な睡眠をとり、ストレスを軽減することで、免疫力を高め、皮脂の分泌を抑制することができます。また、禁煙や適度な運動も効果的です。
脂漏性皮膚炎の予防方法
食生活の改善
脂質の多い食事を控え、ビタミンB群やビタミンCを豊富に含む食品を摂取することで、皮脂の分泌を抑制し、免疫力を高めることができます。特に、ビタミンB2は、皮脂の分泌を抑制する効果があるとされています。
スキンケアの徹底
適切な洗顔や洗髪を行い、肌を清潔に保つことが重要です。脂漏性皮膚炎の症状が悪化している場合は、刺激の少ない無添加の洗顔料やシャンプーを使用することをおすすめします。また、乾燥を防ぐために、保湿剤を塗布することも大切です。
紫外線対策
紫外線は、皮膚にダメージを与え、脂漏性皮膚炎の症状を悪化させることがあります。外出時には、日焼け止めクリームを塗布し、帽子や日傘などを活用して、紫外線を防ぎましょう。
十分な睡眠を取る
睡眠不足は、免疫力の低下を招き、脂漏性皮膚炎の発症リスクを高めます。質の高い睡眠を確保することで、免疫力を高め、脂漏性皮膚炎の予防に繋がります。
脂漏性皮膚炎の歴史と背景
脂漏性皮膚炎は、古くから知られている皮膚疾患であり、その歴史は数百年前にまで遡ります。古代ローマの医師ガレノスは、脂漏性皮膚炎に似た症状を記述しており、当時の文献では、顔面や頭皮に現れる脂っぽいフケを伴う皮膚炎として認識されていました。中世ヨーロッパでは、脂漏性皮膚炎は、体液のバランスの乱れによって引き起こされると考えられていました。
19世紀後半には、顕微鏡の発明により、皮膚の常在菌であるマラセチア菌が発見され、脂漏性皮膚炎の原因として注目されるようになりました。しかし、マラセチア菌が脂漏性皮膚炎の発症に直接関与していることを証明するには、さらなる研究が必要とされました。
20世紀以降、脂漏性皮膚炎の原因は、マラセチア菌の過剰増殖と、免疫システムの異常による炎症反応の組み合わせであるということが、多くの研究によって明らかになってきました。
脂漏性皮膚炎の症状の多様性
脂漏性皮膚炎の症状は、軽度から重度まで、個人差が大きく、さまざまなパターンが見られます。一般的な症状としては、かゆみ、赤み、鱗屑(フケ)、炎症などがありますが、症状の現れ方は人によって異なります。
例えば、頭皮の脂漏性皮膚炎では、フケが大量に発生し、頭皮が赤く腫れ、強い痒みを伴うことがあります。一方、顔面の脂漏性皮膚炎では、鼻の周りや眉間、頬などに赤みと鱗屑が現れ、乾燥やかゆみを感じることがあります。
また、脂漏性皮膚炎は、季節によっても症状が変化することがあります。特に、冬場は乾燥しやすいため、症状が悪化する傾向があります。
脂漏性皮膚炎の具体的な事例
Aさん(30代男性)は、長年、頭皮の脂漏性皮膚炎に悩まされていました。大量のフケが落ち、頭皮のかゆみもひどく、おしゃれなヘアスタイルも諦めていました。さまざまな市販のシャンプーを試してみましたが、効果は見られず、悩んでいたところ、皮膚科を受診しました。
医師からは、抗真菌成分配合のシャンプーと、生活習慣の改善についてアドバイスを受けました。Aさんは、医師の指示に従い、抗真菌成分配合のシャンプーを使用し、食生活を改善し、十分な睡眠をとるように心がけました。
その結果、Aさんの頭皮の脂漏性皮膚炎は徐々に改善し、フケの量も減り、頭皮のかゆみも軽減しました。Aさんは、医師のアドバイスと自分の努力によって、長年悩んでいた脂漏性皮膚炎から解放されました。
薄毛治療の専門家からのアドバイス
私は、脂漏性皮膚炎について次のように考えています。
脂漏性皮膚炎は、適切な治療と予防策を講じることで管理可能な皮膚疾患です。
しかし、症状が改善しない場合は、自己判断で治療を続けるのではなく、早めに皮膚科を受診することが重要です。
脂漏性皮膚炎の治療法は、症状の程度や患部の部位によって異なります。適切な治療法を選択するために、皮膚科医の診察を受けることが重要です。
脂漏性皮膚炎は、完治が難しい疾患ですが、適切な治療と予防策を講じることで、症状をコントロールすることができます。
脂漏性皮膚炎に悩んでいる方は、一人で悩まずに、皮膚科医に相談することをおすすめします。
記事監修
「神奈川・湘南・鎌倉の女性薄毛(FAGA)はルートへ」
院長 清水弘太郎
プロフィール
略歴
三重大学 医学部医学科卒業
桑名市総合医療センター 初期臨床研修 修了
三重大学病院 さいたま市立病院 形成外科 勤務
大手AGAクリニックA 勤務
大手AGAクリニックB 勤務
専門医・所属学会
日本毛髪科学協会 毛髪診断士
厚生労働省 麻酔科標榜医
日本形成外科学会 正会員