薄毛治療に大切な毛周期(ヘアサイクル)とは?

はじめに

 

実は、髪の毛のお話をするときには必ずと言っていいほど、「毛周期(ヘアサイクル)」が関わってきます。
毛周期を理解することで、FAGA・AGAの治療の考え方もよく分かるので、薄毛に悩んでいる人はぜひ見ていただきたいなと思います。

では詳しく説明していきます。

 

 

毛周期(ヘアサイクル)ってなに?

 

毛周期は一言で言うと「毛が生えて抜けてを繰り返すこと」です。よく勘違いされていることですが、毛は皮膚から抜けたとしても、その皮膚の毛根は死んだわけではなく、実は休眠状態に入っているだけなのです。一度、休眠状態に入ったとしても正常な毛根であれば、数ヶ月経てばまた毛が生えてきます。ただし、毛根が死滅してしまった場合にはもう毛は生えてきません。

この毛周期は各段階に分けると、次の図のように成長期、退行期、休止期の3つに分けることができます(下図参照)

 

 

成長期(アナゲン期)

成長期は、髪の毛が最も活発に成長する期間です。髪の毛の成長期は通常2〜6年間続き、新しい髪の毛が作られる時期です。この期間、毛根の毛母細胞が活発に分裂し、毛髪が成長していきます。成長期の終わりには、毛髪は最も長く、太い状態になります。健康な人であれば、成長期の髪の毛は全体の80~90%を占めています。

 

退行期(カタゲン期)

退行期は、毛の成長が止まり、髪の毛根が徐々に縮小していく期間です。髪の毛の退行期は一般的に2〜3週間続きます。この期間、毛母細胞の分裂が停止し、毛髪の成長も止まります。毛根は縮小し、毛髪は毛包から離れ始めます。健康な人であれば、退行期の髪の毛は全体の1~2%を占めています。

 

休止期(テロゲン期)

休止期は髪の毛根の細胞分裂が完全に休止し、新しい成長期が始まるまでの準備期間です。髪の毛の休止期は通常3〜5ヶ月続きます。この期間、毛髪は毛包に留まり、抜け落ちるのを待ちます。休止期の終わりには、毛髪は自然に抜け落ち、新しい毛髪が成長期に入ります。健康な人であれば、休止期の髪の毛は全体の10~20%を占めています。

ちなみに上記の期間は髪の毛の数値であり、トリビア的な話になりますが、例えばまつ毛の成長期は30~45日と短いので、全く切らなくても1cmくらいの長さで収まっているというワケなのです。まつ毛が長い人は「まつ毛の成長期が長い人」と言い換えることもできます。

 

毛周期(ヘアサイクル)の乱れとは?

 

実は、FAGA・AGAの患者さんは一言で言うと、「毛周期(ヘアサイクル)が乱れている人」なのです。

例えばAGAの患者さんですと、男性ホルモンのテストステロンが5α-リダクターゼという酵素によって活性型男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。このDHTが毛包に作用すると、脱毛シグナルが出てしまうため、毛髪の成長期が短縮してしまいます。その結果、健康な方だと2~6年あった髪の成長期が、数ヶ月〜1年に短くなってしまうのです(下図参照)
この脱毛シグナルは毛を抜けさせるだけでなく、髪の毛が太く育たなくなる「軟毛化現象」も引き起こすので、細いヒョロヒョロの髪の毛しか生えなくなってしまいます。

ではDHT以外に毛周期(ヘアサイクル)の乱れを引き起こす原因は何があるのでしょうか?
下に毛周期(ヘアサイクル)の乱れを引き起こす原因をまとめました。

 

生活習慣の乱れ

不規則な生活習慣はヘアサイクルを乱す大きな要因です。十分な睡眠やバランスの取れた食事が重要です。睡眠不足や食事の乱れは、ホルモンバランスを崩し、毛母細胞の活動を阻害する可能性があります。また、過剰な飲酒や喫煙もヘアサイクルに悪影響を及ぼします。

 

栄養不足

髪の毛の健康を保つためには、ビタミンやミネラル、タンパク質などの栄養素が必要です。無理なダイエットは毛周期を乱す原因となります。特に、タンパク質、鉄分、亜鉛、ビオチンやパントテン酸などのビタミンB群などの不足は、髪の毛の成長を阻害し、薄毛の原因となる可能性があります。

▶︎薄毛と亜鉛についてのコラムはこちらから

 

ストレスの影響

ストレスは体全体の健康に悪影響を及ぼしますが、特にヘアサイクルに重大な影響を及ぼします。ストレスは、コルチゾールの分泌を増加させるなどホルモンバランスを乱し、毛母細胞の活動を抑制する可能性があります。他にも、ストレスによって頭皮の血流が悪くなり毛母細胞への酸素・栄養の供給が低下したり、免疫力が低下し頭皮環境が悪化することもあります。

 

ホルモンによる影響

FAGA患者さんだと女性ホルモンや甲状腺ホルモンの減少などで、毛周期の乱れが引き起こされると言われています。
また、先述ですがAGA患者さんだと、男性ホルモンのテストステロンが5α-リダクターゼという酵素によって活性型男性ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。このDHTが毛包に作用すると、脱毛シグナルが出てしまうため、毛髪の成長期が短縮してしまいます。その結果、健康な方だと2~6年あった髪の成長期が、数ヶ月〜1年に短くなってしまうのです。
この脱毛シグナルは毛を抜けさせるだけでなく、髪の毛が太く育たなくなる「軟毛化現象」も引き起こすので、細いヒョロヒョロの髪の毛しか生えなくなってしまいます。

 

季節の変化

季節の変化によってヘアサイクルが影響を受けることがあります。特に秋は抜け毛の量が増えることが知られています。これは、気温や日照時間の変化が、ホルモンバランスや毛母細胞の活動を変化させるためと考えられています。

 

加齢

加齢に伴い、ヘアサイクルが短くなり、髪の毛が細くなります。加齢によって、毛母細胞の活動が低下し、毛髪の成長速度が遅くなるためです。また、毛髪のメラニン色素の生成も減少するため、白髪が増えることもあります。

 

遺伝的要素

薄毛の家族歴がある場合、遺伝的要素もヘアサイクルの乱れに影響します。遺伝的な要因によって、毛周期が短くなったり、毛髪の成長が遅くなったりすることがあります。また、AGA・FAGAなどの遺伝的な脱毛症も存在します。

 

 

毛周期(ヘアサイクル)を正常化する方法

 

では、乱れてしまった毛周期(ヘアサイクル)を元に戻す方法はあるのでしょうか?
これはちゃんとありますので安心してください。以下、毛周期(ヘアサイクル)を正常化する方法を書いていきます。

 

FAGA・AGAの治療をクリニックで受ける

先述の、活性型男性ホルモン(ジヒドロテストステロン、DHT)によって毛周期が短縮している場合は、フィナステリド・デュタステリドなどのDHTの産生を防ぐ内服薬の服用がファーストチョイスになります。
また、女性ホルモンの低下が原因のFAGAであれば、女性ホルモンのバランスを整えていく治療が有効です。
いずれの治療もクリニックの医師の診断のもと治療することが一番重要になります。

 

生活習慣の改善

規則正しい生活習慣を身につけることで、ヘアサイクルを正常化させることができます。バランスの取れた食事や適度なエクササイズが重要です。十分な睡眠をとることで、ホルモンバランスを整え、毛母細胞の活動を促進することができます。また、適度な運動は血行を促進し、頭皮への栄養供給を改善します。

 

栄養補給

栄養バランスの取れた食事は、健康な髪を維持するために不可欠です。特にビタミンB群や亜鉛が効果的です。ビタミンB群は、毛母細胞の活動を促進し、髪の毛の成長をサポートします。亜鉛は、髪の毛の構成成分であるケラチンの合成に不可欠なミネラルなので、積極的に摂取することがおすすめです。

 

リラクゼーションとストレス管理

ストレスをコントロールするためには、リラクゼーションや趣味の時間を持つことが大切です。心地よい環境でリラックスすることが推奨されます。ストレスは、ホルモンバランスを乱し、毛母細胞の活動を抑制する可能性があります。ヨガや瞑想などのリラクゼーション方法を取り入れることで、ストレスを軽減し、ヘアサイクルの正常化を促すことができます。

 

まとめ

 

本記事では、毛周期(ヘアサイクル)の基本から、その乱れによる薄毛の原因と対策について解説しました。正しい知識と適切なケアで、健康な髪を維持しましょう。ヘアサイクルは、髪の毛の成長と休止を繰り返す自然なサイクルです。しかし、生活習慣の乱れやストレスなどによって、ヘアサイクルが乱れ、薄毛などの問題が発生する可能性があります。ヘアサイクルを正常化するためには、規則正しい生活習慣、バランスの取れた食事、ストレス管理などが重要です。また、必要に応じて毛髪専門の医師の診察を受けることも大切です。

 

 

記事監修

「神奈川・湘南・鎌倉の女性薄毛(FAGA)はルートへ」

ルートレディースAGAクリニック

 

院長 清水弘太郎

プロフィール

略歴

三重大学 医学部医学科卒業
桑名市総合医療センター 初期臨床研修 修了
三重大学病院 さいたま市立病院 形成外科 勤務
大手AGAクリニックA 勤務
大手AGAクリニックB 勤務

専門医・所属学会

日本毛髪科学協会 毛髪診断士
厚生労働省 麻酔科標榜医
日本形成外科学会 正会員