はじめに
皆さんは「植毛」についてお聞きになったことはありますか?
植毛は薄毛で髪の毛が少なくなった頭皮に髪の毛を移植することを指しますが、これはどんな方におすすめなのでしょうか。
今回は薄毛治療の最終手段とも言える植毛について詳しく書いていこうと思います。
通常の薄毛治療との併用についても記載していますので、薄毛に悩んでらっしゃる方は最後まで見ていただけると幸いです。
では解説していきます。
植毛とは?
植毛は、自身の毛髪または人工毛を使用して薄毛部分の頭皮へ移植する方法です。薄毛の進行が著しい場合や、頭頂部や前頭部など広範囲の薄毛に悩んでいる人にとって、植毛は有効な選択肢の一つとして存在しています。
自毛植毛と人工毛植毛の違い
植毛には、自身の毛髪を薄毛になっている部分へ移植する「自毛植毛」と、人工毛を使用する「人工毛植毛」の2種類があります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、自身の状況や希望に合った方法を選択することが重要です。ただ薄毛治療の専門医師である私としては、人工毛の移植にはデメリットが多いと考えておりますので、もし植毛をされるとしたら自毛植毛で検討することをお勧めします。
人工毛植毛について
人工毛植毛とは
人工毛植毛は、合成繊維で作られた人工毛を薄毛部分に移植することで、短期間で薄毛を改善する方法です。人工毛には、自然な見た目を持つものや、耐久性に優れたものなど、様々な種類があります。
人工毛植毛のメリット
人工毛植毛は自毛植毛と比べて、施術後の効果が早く現れるというメリットがあります。また、自毛植毛では移植する毛(グラフト)が細かったりAGA・FAGAになっていると、移植後もその影響を受けるため、人工毛植毛はその影響がなく植毛できるのもメリットです。そして経済的な面では手術費用が自毛植毛よりも安価な場合もあります。
人工毛植毛のデメリット
人工毛植毛は、自毛植毛と比べて、拒絶反応や感染症のリスクが高いというデメリットがあります。また、人工毛は時間の経過とともに劣化するため、定期的なメンテナンスが必要になり、半永久的な治療法とは言えません。ちなみにアメリカでは上記の理由から人工毛の移植が禁止されているため、日本国内でもマイナーな治療方法となっております。
自毛植毛について
自毛植毛とは
みなさんの髪の毛を作っているのは毛根にある毛母細胞や毛乳頭細胞なのですが、自毛植毛はその髪を作る器官ごと移植する方法になります。なので移植先で自毛植毛した髪の毛がきちんと生着した場合は、その髪の毛が毛周期を続けるので半永久的に伸び続けるのです。
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髪の構造についてのコラム
自毛植毛には、FUT法、FUE法をはじめとして何種類かの手法が存在します。
FUT法(帯状採取法、Follicular Unit Transplantation)
FUT法は、頭皮から毛髪を採取する際に、帯状に皮膚を切除する方法です。短時間で手術ができますが、頭皮ごと毛根を部分採取するので、毛根の向きは予測不可能で毛根切断が起こりやすいです。また、採取部瘢痕性脱毛のリスクがあったり、採取予定株数が安定しないデメリットもあります。
FUE法(毛穴くり抜き法、Follicular Unit Extraction)
FUE法は、頭皮から毛髪を採取する際に、一つずつ毛根ごと採取する方法です。頭皮は切り取らないので、傷跡が残りにくいのが特徴です。他にも、毛根採取率が高い(800~1000グラフトの採取が可能)、2本毛3本毛の選択的採取が可能などのメリットもあります。
DHI 法(Direct Hair Implantation)
FUE法の一種で、特殊な器具を使用して毛髪を直接移植します。より精密な植毛が可能で、生着率が高いとされています。
ロボット支援植毛
ARTAS systemなどのロボット技術を用いて、より精密なFUE法を行います。人間の手技よりも正確で一貫性のある結果が期待できます。
毛髪分割法
既存の毛包を分割して、より多くの毛髪を得る方法です。限られた供給毛で広い面積をカバーできる可能性があるので、毛髪の採取部のダメージが抑えられるメリットがあります。
自毛植毛のメリット
自毛植毛は、自身の毛髪を使用し、生着した場合は半永久的に髪が伸び続け、自然な仕上がりになることが期待できます。また、人工毛と比べて拒絶反応が起こりにくいというメリットもあります。
自毛植毛のデメリット
自毛植毛は、手術費用が高額になることが多く、施術後のダウンタイムが長いこともデメリットです。また、採取した部位に傷跡が残る場合もあります。また、人工毛植毛のところで書きましたが、自毛植毛では移植する毛(グラフト)が細かったりAGA・FAGAになっていると、移植後もその影響を受けるので注意が必要です。
植毛以外の薄毛治療
植毛はダウンタイムがあり侵襲も大きいです。女性の場合ですとルードヴィッヒ分類Ⅲの方などは適応になる可能性がありますが、当院では植毛は女性には強く推奨されていないため行なっておりません。まずは以下に述べるような薄毛治療をおこなうことが大切です。
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FAGAの重症度についてのコラム
発毛効果/脱毛抑制効果のある内服薬・外用薬の使用
発毛効果/脱毛抑制効果のある成分としてはミノキシジルやフィナステリドなどの成分があり、毛髪の成長を促進し、薄毛の進行を遅らせる効果が期待できます。
メソセラピー治療
メソセラピーは、頭皮に有効成分を直接注入する治療法です。髪を作る毛母細胞の活性化を促すミノキシジル・サイトカインを配合した薬液を、頭皮に細かく注入することで、毛髪の成長を毛母細胞から活性化し、薄毛の改善を目指します。
レーザー治療
レーザー治療は、毛根の細胞を刺激し、発毛を促進する治療法です。低出力レーザーを頭皮に照射することで、毛髪の成長を促進し、薄毛の改善を目指します。
まとめ
植毛は、効果的な薄毛対策の一つですが、自身に合った方法を選ぶことが重要です。植毛には、自毛植毛と人工毛植毛の2種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。また、植毛以外の薄毛対策として、育毛剤や発毛剤の使用、メソセラピー治療、レーザー治療などがあります。薄毛に悩んでいる場合は、専門医に相談し、自身に合った治療法を選択することが大切です。
ただ、女性の植毛に関しては2017年の男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインではC1と推奨度は低く、行ってもよい程度に留まっているので、女性の薄毛(FAGA)の患者様は注意が必要です。
記事監修
「神奈川・湘南・鎌倉の女性薄毛(FAGA)はルートへ」
院長 清水弘太郎
プロフィール
略歴
三重大学 医学部医学科卒業
桑名市総合医療センター 初期臨床研修 修了
三重大学病院 さいたま市立病院 形成外科 勤務
大手AGAクリニックA 勤務
大手AGAクリニックB 勤務
専門医・所属学会
日本毛髪科学協会 毛髪診断士
厚生労働省 麻酔科標榜医
日本形成外科学会 正会員