FAGAとは？女性の薄毛原因と治療法を医師が解説

FAGA（エフエージーエー）とは？AGAや他の脱毛症との違い

FAGA（女性男性型脱毛症）とは、Female Androgenetic Alopeciaの略で、女性に多く見られる進行性の脱毛症です。

特に頭頂部を中心に髪のボリュームが減少し、進行すると全体的に薄毛になることもあります。

FAGAとAGAの違い

FAGA（女性男性型脱毛症）は、女性に特有の進行性の脱毛症で、頭頂部を中心に髪のボリュームが減少し、分け目が目立ちやすくなるのが特徴です。

一方、AGA（男性型脱毛症）は、前頭部や頭頂部から薄毛が進行し、生え際が後退する傾向があります。

FAGAは、女性ホルモンの減少やホルモンバランスの乱れが主な原因とされ、比較的ゆるやかに進行するため、初期段階では気づきにくいことがあります。

FAGAとFPHLの違い

FPHL（女性型脱毛症）は、Female Pattern Hair Lossの略で、女性に見られる進行性の脱毛症の総称です。

FAGAはFPHLの一種であり、特にホルモンバランスの変化による脱毛症を指します。FPHLには、FAGAのほかにびまん性脱毛症や分娩後脱毛症など、さまざまなタイプの脱毛症が含まれます。

つまり、FAGAはFPHLの中の一つのタイプであり、原因や症状によって分類されることになります。

他の脱毛症（円形脱毛症・分娩後脱毛症など）との見分け方

女性の脱毛症には、FAGA以外にもさまざまな種類があります。以下に代表的な脱毛症とその特徴をまとめます。

脱毛症の種類	特徴
円形脱毛症	・突然、円形または楕円形の脱毛斑が現れる ・複数箇所に発生することも ・自己免疫疾患が関与しているとされる
分娩後脱毛症	・出産後、ホルモンバランスの急激な変化により、一時的に脱毛が増加する ・通常は自然に回復する
牽引性脱毛症	髪を強く引っ張るヘアスタイル（ポニーテールなど）を長期間続けることで、生え際や側頭部に脱毛が生じる
脂漏性脱毛症	・皮脂の過剰分泌や頭皮の炎症が原因 ・頭皮全体に脱毛が見られる

これらの脱毛症は、症状の現れ方や原因が異なるため、専門の医師による診断が重要です。脱毛の進行パターンや頭皮の状態を詳細に観察することで、適切な治療法を選択することが可能になります。

FAGAのメカニズム

毛周期（ヘアサイクル）の乱れが起こる

髪は「成長期→退行期→休止期」を繰り返して生え変わりますが、FAGAでは成長期が短くなり、髪が太く長く育つ前に抜けてしまう状態になります。

とくに女性は毛周期の成長期を延長させる作用のあるエストロゲンの分泌が産後や更年期などに低下するので、毛周期が乱れてしまうことがあります。

一本毛化で髪の本数が減る

通常は1つの毛穴から2〜4本の髪が生えていますが、FAGAでは1本しか生えなくなる（一本毛化）ことがあります。これにより、地肌が透けて見えやすくなり、ボリュームも失われます。

髪を作る細胞（毛母細胞）の働きが弱まる

毛母細胞は髪のもとを作る細胞です。FAGAが進行すると、この細胞の数や働きが低下し、細く短い髪しか育たなくなります。

その他

FAGAは毛周期の乱れだけでなく、体内のさまざまな異常が重なって進行する複雑な脱毛症です。

たとえば、血流低下による栄養不足、毛包周囲の線維化やコラーゲンの変化、炎症性サイトカインの増加による慢性炎症が挙げられます。さらに、活性酸素による酸化ストレスや毛母細胞のDNA損傷も影響します。

女性ホルモン（エストロゲン）の低下に加えて、他のホルモンの異常（プロラクチン、甲状腺ホルモンなど）や、遺伝的素因も関与しており、多面的な対策が必要です。

FAGAの主な症状と進行パターン

FAGA（女性男性型脱毛症）は、以下のような症状が見られることがあります。ご自身の状態を簡易的に確認するために、以下のチェックリストをご活用ください。

• 分け目が広がってきた
• 髪のボリュームが減少し、ペタンとする
• 髪が細くなり、コシがなくなった
• 抜け毛の量が増えたと感じる
• 頭皮が透けて見えるようになった
• 家族や親族に薄毛の人がいる
• ストレスや睡眠不足が続いている
• 過度なダイエットをしている
• 喫煙や飲酒の習慣がある
• 頭皮にかゆみや赤みがある
  

これらの項目に複数該当する場合、FAGAの可能性があります。気づいた時点で専門の医療機関での診断を受けることをおすすめします。

進行の段階とセルフチェック方法

FAGAの進行度を把握するために、ルードヴィッヒ分類やSinclairスケールが用いられます。以下はルードヴィッヒ分類の概要です。

進行度	特徴
Ⅰ期	分け目の幅が広がり始めるが、全体的なボリュームは保たれている
Ⅱ期	分け目の幅がさらに広がり、髪の密度が低下して地肌が目立つようになる
Ⅲ期	頭頂部の髪が極端に細くなり、地肌がはっきりと見える状態

また、FAGAの進行パターンは以下の3つに分類されます。

• ルードヴィヒ型：頭頂部の分け目が広がるタイプ。最も一般的な進行パターン
• クリスマスツリー型：前髪から頭頂部にかけて、地肌がクリスマスツリーのように透けて見えるタイプ
• ハミルトン型：こめかみの髪が薄くなり、M字型に進行するタイプ。男性型脱毛症に似た進行パターン

これらの進行パターンや進行度を自己判断することは難しいため、専門の医師による診断が重要です。早期に適切な治療を開始することで、進行を遅らせたり、改善が期待できます。

FAGAの原因と関係する生活習慣

FAGA（女性男性型脱毛症）は、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症します。以下に、主な原因とそれに関連する生活習慣について詳しく解説します。

ホルモンバランスの乱れ（加齢・出産など）

女性ホルモンであるエストロゲンは、髪の成長やハリ・コシを保つ役割を担っています。

しかし、加齢や出産、閉経などによりエストロゲンの分泌が減少すると、髪の成長周期が乱れ、抜け毛や薄毛が進行することがあります。

また、ストレスや睡眠不足もホルモンバランスを崩す要因となり得ます。

栄養不足・ダイエット・食生活

直接的な原因になることは稀ですが、無理なダイエットや偏った食生活は、髪の成長に必要な栄養素（タンパク質、ビタミン、ミネラルなど）の不足を招きます。

特に、タンパク質や亜鉛、ビタミンB群の不足は、髪の生成や成長を妨げ、抜け毛の原因となります。

外食中心の生活や過度な食事制限は、栄養バランスを崩しやすいため注意が必要です。

ストレス・自律神経の乱れ・睡眠不足

慢性的なストレスや睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、血行不良やホルモン分泌の乱れを引き起こします。

これにより、頭皮への栄養供給が不安定になり、髪の成長が阻害されることがあります。

また、睡眠中に分泌される成長ホルモンの減少も、髪の再生力を低下させる要因となります。

ヘアケア製品・紫外線・帽子など外的要因

自分の髪質や頭皮に合わないヘアケア製品の使用は、頭皮に刺激を与え、炎症や乾燥を引き起こす可能性があります。

また、紫外線は髪や頭皮にダメージを与え、髪の乾燥やキューティクルの損傷を招きます。

さらに、長時間の帽子の着用や締め付けの強いヘアスタイルも、頭皮の血行を妨げ、抜け毛の原因となることがあります。

遺伝や体質の影響

FAGAは、遺伝的な要因や体質も関与していると考えられています。家族に薄毛の人がいる場合、FAGAを発症するリスクが高まる可能性があります。

また、ホルモン感受性の高い体質や、髪の成長周期が短い体質も、FAGAの発症に影響を与えることがあります。

FAGAの治療法と治療薬の選び方

女性の薄毛治療は、主に「抜け毛の進行を抑える内服薬」と「髪を生やす発毛剤」の2種類で進めます。発毛のスピードを上げたい、予算に余裕がある方はプラスアルファで注入治療などの発毛治療を行います。

以下の表に、代表的な治療法をまとめました。

治療法	特徴	効果	注意点
内服薬	体内から薄毛の進行を抑制し、発毛を促進	薄毛進行の抑制、発毛促進	副作用（生理不順、頻尿、血中電解質バランスの変化、食欲不振、妊娠中の使用不可）に注意
外用薬	頭皮に直接作用し、発毛を促進	血行促進、毛包の活性化	頭皮が荒れる可能性がある
注入治療	成分を頭皮に直接注入し、毛包に集中的にアプローチ	髪の再生促進、成長因子の直接供給	複数回の治療が必要（6〜12回が目安）
毛髪再生点滴	ヒト幹細胞培養上清液やエクソソームを全身に点滴し、再生力を内側から高める	頭皮環境の改善、毛包の活性化、美肌効果も期待	クリニックによって注入成分が異なるため、費用も差がある

内服薬の種類と効果

内服薬は体内から薄毛の進行を抑えたり、髪の成長を促したりする治療方法です。女性の薄毛治療に使用される代表的な内服薬には以下があります。

治療薬	効果	副作用・注意点
スピロノラクトン	男性ホルモンの働きを抑え、FAGAの進行を遅らせる	生理不順、頻尿、血中電解質バランスの変化、食欲不振、下痢、便秘、倦怠感など
パントガール	髪の成長を促進し、抜け毛を減らす	胸焼け、腹痛、下痢など（発生頻度は低い）
ミノキシジル	血行を促進し毛包を刺激、発毛効果が科学的に認められている	初期脱毛、多毛症、動悸、頭痛、むくみなど

外用薬の種類と効果

ミノキシジル配合の外用薬は、頭皮に直接塗布することで毛包（毛根の組織）に作用する治療薬です。FAGAを含むびまん性脱毛症をはじめ、円形脱毛症など幅広い治療に用いられる薬です。

ミノキシジルは、日本皮膚科学会の脱毛症診療ガイドライン（2017年版）において、女性型脱毛症（FAGA）の治療として推奨度A（行うよう強く勧める）に位置づけられています。ガイドラインでも有効性が認められており、女性にとって有力な治療法と言えます。

効果	血管拡張作用で頭皮の血行を促進し、毛包を活性化する
適応	びまん性脱毛症、分娩後脱毛症、円形脱毛症など
副作用	湿疹、初期脱毛、動悸、頭痛、多毛症、むくみなど

男性の薄毛治療にも使用されますが、濃度が異なるため女性向け製品を使いましょう。

内服薬と外用薬の違いは？

内服薬は外用薬よりも早期から高い治療効果が得られます。一方、外用薬は緩やかな効果で副作用が少ない点がメリットです。

併用も可能なので、発毛効果を高めたい方には組み合わせての治療をおすすめします。

注入治療の種類と効果

薄毛の進行が気になる場合は、頭皮に直接有効成分を注入する治療法も効果的です。これらの治療は、内服薬や外用薬では改善が難しいケースや、発毛スピードを上げたい場合に有効です。

治療法	効果	適応	副作用
メソセラピー	頭皮にミノキシジルや成長因子、ビタミンなどを注入し、毛根に栄養を直接届ける	びまん性脱毛症、分娩後脱毛症、円形脱毛症	頭皮の腫れ、炎症、内出血、痛みなど
HARG療法	幹細胞由来の成長因子で毛母細胞を活性化し、発毛を促進する	びまん性脱毛症、分娩後脱毛症、円形脱毛症	頭皮の腫れ、炎症、内出血、痛みなど

メソセラピーはミノキシジルを主成分としているクリニックが多いですが、クリニックによって独自に配合を決めていることも多くあります。

一方HARG療法は「日本医療毛髪再生研究会」が認定しているクリニックでしか受けることができず、成分は成長因子というタンパク質をメインとした製剤です。

どちらも注射器で手打ちするか、メソガンなどの電動の医療機器で注入します。

育毛・発毛点滴

育毛・発毛点滴は、髪の成長に必要な栄養素や有効成分を点滴で体内に直接補給する治療法です。飲み薬や外用薬だけでは補いきれない栄養を補充し、頭皮環境を整えて育毛をサポートします。

点滴には主に「育毛点滴」と「発毛点滴」の2種類があり、成分や効果が異なります。

治療法	効果	適応	副作用
育毛点滴	ビタミン・ビオチンなど髪の成長に必要な成分を補う	びまん性脱毛症	痛み、腫れ、内出血、かゆみなど
発毛点滴	ヒト幹細胞培養上清液・エクソソームを点滴し、毛母細胞の修復・活性化して発毛を促す	びまん性脱毛症（美容効果もあります）	免疫反応やアレルギー症状など

FAGA治療の費用相場と保険適用の可否

保険適用の可否

FAGA治療は一般的に美容目的とされるため、健康保険の適用外となります。ただし、FAGA以外の脱毛症であれば、以下のような例外も存在します。

• 自己免疫疾患による円形脱毛症
• 甲状腺機能障害による脱毛
• 梅毒性脱毛症

治療費用の相場

FAGA治療は自由診療に分類されるため、費用は全額自己負担となります。治療方法やクリニックによって費用は異なります。

【当院の場合】

プラン名	特徴・対象	内容	料金（税込）
発毛スタンダードコース	抜け毛を抑制・発毛を促したい方	内服薬＋外用薬	18,500円〜37,000円／月
発毛プレミアムコース	より効果的な発毛を求める方	内服薬＋外用薬＋メソセラピー＋発毛点滴	67,500円〜135,000円／月

FAGAを予防・改善するための生活習慣

FAGAは進行性の脱毛症ですが、日常生活の見直しによって進行を抑えたり、予防につなげることが可能です。ここでは、FAGAを予防・改善するために取り入れたい生活習慣を紹介します。

頭皮に合ったヘアケアを選択する

市販のシャンプーやトリートメントが頭皮に合っていない場合、かえって炎症や脱毛を引き起こすこともあります。

髪が細くなってきたと感じたら、低刺激・医師推奨のヘアケア製品に切り替えることを検討しましょう。また、自己判断で製品を選ぶのではなく、専門医に相談することもおすすめです。

紫外線対策を徹底する

頭皮は紫外線の影響を受けやすく、長時間の直射日光は毛包の損傷や乾燥、炎症を引き起こします。日傘・帽子の使用、UVカット効果のあるヘアケア製品などを活用し、物理的な紫外線対策を徹底しましょう。

ストレスケアを習慣にする

ストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、血行不良や髪の成長サイクルの異常を招く原因となります。ウォーキング・ストレッチ・趣味・十分な休養など、日常の中で無理なく取り組めるストレスケアを意識しましょう。

栄養バランスの取れた食事を意識する

髪の健康には、たんぱく質、亜鉛、鉄分、ビタミンB群などの栄養素が必要です。極端な食事制限や偏食は避け、栄養バランスの取れた食生活を心がけましょう。豆類、魚介、海藻類、緑黄色野菜などが特におすすめです。

良質な睡眠をとる

髪の修復・成長を促す成長ホルモンは、睡眠中に多く分泌されます。毎日6〜7時間以上の質の高い睡眠をとることで、頭皮環境を整え、抜け毛の予防につながります。就寝前のスマホ・カフェインは控えるとより効果的です。

FAGA治療に関するよくあるご質問

まとめ

FAGA（女性男性型脱毛症）は、加齢・ホルモンバランスの乱れ・ストレス・生活習慣など複数の要因が重なって発症する進行性の脱毛症です。初期段階では気づきにくいことも多く、「髪が細くなった」「分け目が目立つ」などのサインを見逃さず、早期に対処することが重要です。

治療法には、内服薬・外用薬・注入治療・毛髪再生点滴など多岐にわたり、自分の症状やライフスタイルに合った選択が求められます。また、日々のヘアケアや食生活、ストレス対策などもFAGAの予防と改善に直結する要素です。

気になる症状がある方は、自己判断せず専門クリニックでの診断・相談をおすすめします。一人で悩まず、正しい知識とサポートのもと、髪と自分の未来に向き合いましょう。

【参照元】

• 「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」日本皮膚科学会ガイドライン
• 「円形脱毛症診療ガイドライン2024」日本皮膚科学会ガイドライン