この記事の結論
- FPHLは女性の薄毛全体を指す用語で、FAGAは男性ホルモンが関与する特定の脱毛症
- FPHLにはFAGA、牽引性脱毛症、分娩後脱毛症の3つが含まれる
- FAGAは薬物療法中心、牽引性脱毛症は原因除去、分娩後脱毛症は経過観察が基本
- 正確な診断が適切な治療の第一歩となるため、気になる症状があれば医師に相談が必須
FPHLとFAGAの基本的な違い
女性の薄毛治療を検討する際、FPHLとFAGAという用語を混同してしまう方が非常に多いのが現状です。この2つの概念を正しく理解することは、適切な治療選択の第一歩となります。
FPHLは女性の薄毛全般をまとめた総称
FPHL(Female Pattern Hair Loss)は、女性の薄毛をまとめて表す言葉です。牽引性脱毛症、分娩後脱毛症、そしてFAGAも含めて、女性の薄毛全般を指す医学用語として使用されています。
2017年に改定された日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」では、女性の脱毛症研究の進歩に伴い、従来の「女性男性型脱毛症」から「女性型脱毛症」という病名に変更されました。


これにより、女性の薄毛をより幅広く捉える考え方が示されています。つまり、FPHLは女性の薄毛を理解するための「大きな傘」のような存在と捉えることができます。
FAGAは男性ホルモンが関与する特定の脱毛症


一方、FAGA(Female Androgenetic Alopecia)は、男性ホルモンが関与する特定の脱毛症を指します。女性にも微量の男性ホルモンが存在し、更年期などでホルモンバランスが変化した際に、男性ホルモンの影響で起こる薄毛がFAGAです。
FAGAの特徴は、頭部全体がまばらに薄くなる「びまん性脱毛」のパターンを示すことです。男性のAGAのように局所的に脱毛するのではなく、髪全体のボリュームが徐々に減少していくのが典型的な症状です。つまり、FAGAはFPHLという大きな概念の中に含まれる、一つの特定の疾患ということになります。
FPHLに含まれる3つの主な脱毛症
FPHLという包括的概念には、原因や症状が異なる複数の脱毛症が含まれています。それぞれの特徴を理解することで、適切な治療選択が可能になります。
FAGA(女性男性型脱毛症)
FAGAは男性ホルモンの影響による脱毛症で、女性の薄毛の中でも最も多く見られる疾患です。女性にも微量に存在する男性ホルモン(テストステロン)が、5αリダクターゼという酵素と結びついてジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、毛乳頭細胞に作用して脱毛を引き起こします。
主な症状は頭頂部から後頭部にかけての広範囲な薄毛で、ルードヴィッヒ分類によってI〜III型に分類されます。
40代以降の女性に多く見られ、更年期のホルモンバランス変化と密接に関連しています。進行は緩やかですが、放置すると徐々に範囲が拡大していきます。
牽引性脱毛症
牽引性脱毛症は、長期間にわたる髪への物理的な負担が原因で起こる脱毛症です。ポニーテール、お団子ヘア、エクステンション、頻繁なヘアアイロンの使用などにより、同じ部位の髪が継続的に引っ張られることで毛根が損傷し、脱毛に至ります。
典型的な症状は生え際や側頭部の局所的な薄毛で、特に髪を強く引っ張る髪型を長期間続けた部分に現れます。初期段階では髪型を変えることで改善可能ですが、根が完全に損傷すると髪が生えてこなくなる可能性があります。予防が最も重要で、髪への負担を軽減する髪型への変更が効果的です。
分娩後脱毛症(産後脱毛症)
分娩後脱毛症は、出産後のホルモンバランス変化により起こる一時的な脱毛症です。妊娠中は女性ホルモン(エストロゲン)の増加により髪の成長期が延長され、本来抜けるはずの髪が維持されています。しかし、出産後にエストロゲンが急激に減少することで、妊娠中に抜けなかった髪が一気に抜け落ちます。
症状は出産後3〜6ヶ月頃から始まり、頭全体の髪が均等に薄くなるのが特徴です。多くの場合、産後1年程度で自然に回復しますが、授乳期間の栄養不足やストレス、睡眠不足などにより回復が遅れる場合もあります。基本的には経過観察が中心となりますが、長期間改善しない場合は医師への相談が必要です。
勘違いしやすい症状の見分け方
FPHLに含まれる脱毛症は、症状が似ているため区別が困難なケースが多く見られます。しかし、正確な診断なくして適切な治療は不可能です。ここでは、それぞれの脱毛症を見分けるための具体的なポイントをご紹介します。
脱毛パターンによる判別法
各脱毛症には特徴的な脱毛パターンがあり、これが最も重要な判別要素となります。
FAGAの場合は、頭頂部から後頭部にかけて広範囲にわたってまばらに薄くなります。特に分け目が目立つようになり、ルードヴィッヒ分類I〜III型の進行パターンを示します。
牽引性脱毛症は、ポニーテールなどで常に引っ張られる生え際や側頭部に局所的な薄毛が現れます。髪型による物理的な負担が原因のため、負担のかかる部位に限定されるのが特徴です。
発症年齢と進行スピードの違い
発症時期と進行速度も重要な判別ポイントです。
FAGAは40代以降に多く見られ、女性ホルモンの減少とともに徐々に進行します。更年期前後での発症が典型的で、数年をかけてゆっくりと薄毛が進行していきます。
分娩後脱毛症は出産後3〜6ヶ月以内に急激に抜け毛が増加し、通常は産後1年程度で自然回復します。発症時期が出産と明確に関連しているため、比較的判別しやすい脱毛症です。
抜け毛の特徴と毛質の変化
抜け毛の観察により、ある程度の判別が可能です。
FAGAでは軟毛化現象が特徴的で、抜けた髪が以前より細く短くなっています。毛根部分も細くなり、髪全体にハリやコシがなくなってきます。
牽引性脱毛症では、物理的な負担により毛根から完全に抜けた健康な髪が多く見られ、毛質の変化は比較的少ないのが特徴です。ただし、長期間続くと毛根が損傷し、毛質が変化する場合もあります。
FPHLの症状別の治療アプローチ
FPHLの治療は、原因となる脱毛症によって異なります。適切な診断に基づいた症状別のアプローチが、治療成功の鍵となります。
FAGA(女性男性型脱毛症)の治療法
FAGAの治療は薬物療法が中心となり、主にスピロノラクトンとミノキシジルが使用されます。
治療法 | 種類 | 効果・作用 | 副作用・注意点 |
---|---|---|---|
スピロノラクトン | 内服薬 | ・男性ホルモンの作用を阻害 ・DHT産生抑制で脱毛進行を防ぐ | ・頻尿、生理不順 ・利尿剤のため水分管理が必要 |
ミノキシジル外用薬 | 外用薬 | ・血管拡張作用 ・毛根への栄養供給改善 | 頭皮のかゆみ、かぶれ ※継続使用が必要 |
ミノキシジル内服薬 | 内服薬(タブレット) | 外用薬より強い発毛効果 | 動悸、めまい、むくみ、多毛症 ※医師の管理下での使用必須 |
LED照射治療 | 光治療 | 毛根細胞の活性化 | 継続的な照射が必要 |
メソセラピー | 注射治療 | 頭皮に直接有効成分注入 | 注射部位の痛み、腫れ |
治療期間は最低6ヶ月以上の継続が必要で、効果の判定には1年程度を要することが多いです。
牽引性脱毛症の治療法
牽引性脱毛症の治療は、原因となる物理的負担の除去が最優先です。
まず、髪を強く引っ張る髪型を避け、ゆるい髪型に変更します。ポニーテールの位置を変える、髪をまとめる頻度を減らす、就寝時は髪を結ばないなどの対策が効果的です。
ヘアアイロンやカーラーの使用頻度を減らし、使用する際は熱保護剤を使用して髪へのダメージを最小限に抑えます。エクステンションや編み込みなど、髪に負担をかけるヘアスタイルは一時的に控えることが重要です。
初期段階であれば、これらの対策により自然回復が期待できます。ただし、毛根が完全に損傷している場合は、ミノキシジル外用薬による治療や、重症例では植毛手術が検討される場合もあります。予防が最も重要な治療となるため、日常的なヘアケアの見直しが不可欠です。
分娩後脱毛症(産後脱毛症)の治療法
分娩後脱毛症は自然回復が基本となるため、積極的な治療よりも経過観察が中心となります。
最も重要なのは適切な栄養摂取と生活習慣の改善です。授乳期は特に鉄分、タンパク質、ビタミンB群の摂取を心がけ、髪の成長に必要な栄養素を十分に補給します。
睡眠不足やストレスは回復を遅らせるため、家族の協力を得て十分な休息を取ることが大切です。過度なダイエットは避け、バランスの取れた食事を心がけましょう。
産後1年を過ぎても改善しない場合や、脱毛が著しく進行する場合は、他の脱毛症との鑑別診断が必要です。この場合、ミノキシジル外用薬や栄養補助療法が検討されることがあります。ただし、授乳中の薬物使用は慎重に判断する必要があるため、医師との相談が不可欠です。
FPHLに関するよくある質問
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FPHLは自然に治りますか?
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FPHLの自然回復は症状の種類によって大きく異なります。
分娩後脱毛症は多くの場合、産後1年程度で自然に回復します。しかし、FAGAや進行した牽引性脱毛症は自然回復が困難で、適切な治療が必要です。
自己判断せず、まずは医師による正確な診断を受けることをおすすめします。
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FPHLの治療期間はどのくらいですか?
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FAGAの場合、効果実感まで最低6ヶ月、明確な改善には1年以上かかります。牽引性脱毛症は原因除去により数ヶ月で改善する場合もありますが、毛根損傷があると長期治療が必要です。
継続性が重要で、途中で中断すると効果が失われる可能性があります。
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市販の育毛剤でFPHLは改善できますか?
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市販品では限定的な効果しか期待できません。 一般的な育毛剤は頭皮環境を改善する効果がありますが、FPHLの根本原因は改善できません。特にFAGAはお薬による治療が必要です。
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FPHLの予防方法はありますか?
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牽引性脱毛症は髪を引っ張る髪型を避けることで予防可能です。
FAGAは完全予防は困難ですが、バランスの良い食事、適度な運動、ストレス管理が効果的です。早期発見・早期治療が最も重要です。
まとめ
FPHLは女性の薄毛全般を指す包括的概念で、FAGA、牽引性脱毛症、分娩後脱毛症などが含まれます。正確な診断が適切な治療の第一歩となるため、症状の特徴を理解し、医師による詳細な診察を受けることが重要です。
それぞれの脱毛症には異なる原因と治療法があり、自己判断による対処では十分な効果が得られない場合が多くあります。特にFAGAのような進行性の脱毛症は、早期治療により良好な結果が期待できるため、気になる症状があれば迷わず医師にご相談ください。
ルートレディースAGAクリニックでは、女性の薄毛治療に精通した医師が、患者様一人ひとりの症状に応じた最適な治療プランをご提案いたします。まずはお気軽に無料カウンセリングをご利用ください。
【注意事項】
- 本ページで紹介している治療は自由診療(自費診療)であり、健康保険の適用はありません。
- 「ミノキシジル内服薬」「メソセラピー」「HARG療法」「スピロノラクトン」「パントガール」は、日本国内において医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく承認を受けていません。
- 日本国内において未承認の医薬品・治療法は、厚生労働省の「医薬品副作用被害救済制度」の対象とはなりません。
- 効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。