夏の女性の抜け毛は自然現象?正常な本数と判断基準

健康な女性でも夏は抜け毛が1.5〜2倍に増加する
健康な女性の場合、通常1日に50〜100本程度の髪の毛が自然に抜け落ちます。しかし夏季には、この本数が1.5〜2倍、つまり1日に200本程度まで増加することが分かっています。これは病的な脱毛ではなく、季節的な生理現象の一つです。
多くの動物に見られる換毛期と同様に、人間にも季節による毛髪の生え変わりサイクルが存在します。特に8月から9月にかけては抜け毛のピークを迎える傾向があり、この時期に抜け毛の増加を実感する女性が多くなります。
1日の抜け毛本数の目安と異常な抜け毛の見分け方
抜け毛の本数を正確に数えるのは現実的ではありませんが、日常生活の中で抜け毛の状態をチェックする方法があります。以下の目安を参考に、ご自身の抜け毛が正常範囲内かどうかを判断してみてください。
正常な抜け毛の特徴
- シャンプー時に手に絡まる髪:10〜30本程度
- ドライヤー後の床に落ちている髪:5〜15本程度
- 朝起きたときの枕についている髪:0〜5本程度
- 抜けた髪の根元に白い球状の毛根がついている
一方、以下のような症状が見られる場合は、季節的な抜け毛を超えている可能性があります。薄毛専門の医療機関や皮膚科での相談を検討することをおすすめします。
注意が必要な抜け毛の特徴
- 1回のシャンプーで50本以上抜ける状態が2週間以上続く
- 抜けた髪が細く短い
- 毛根が見当たらない、または黒くなっている
- 特定の部分に集中して抜け毛が発生している
夏に女性の抜け毛が増える主な3つの原因

実は、夏特有の環境要因が複合的に作用することで、頭皮と髪にダメージを与え抜け毛が増えている可能性があります。
考えられる原因は主に3つです。
- 強い紫外線による頭皮と毛根へのダメージ
- エアコンによる頭皮の乾燥と血行不良
- 汗と皮脂の過剰分泌による毛穴詰まり
詳しく見ていきましょう。
1.強い紫外線による頭皮と毛根へのダメージ
夏の抜け毛の最大の要因は、強い紫外線が頭皮と毛根に与える深刻なダメージです。顔や体には日焼け止めを塗る女性が多い一方で、頭皮の紫外線対策は見落とされがちです。
紫外線は頭皮の奥深くまで浸透し、毛根周辺の細胞にダメージを与えます。具体的には、髪の主成分であるタンパク質(ケラチン)の合成を阻害し、毛母細胞の正常な働きを妨げます。さらに、紫外線による酸化ストレスが頭皮の炎症を引き起こし、健康な髪の成長サイクルが乱れてしまうのです。
7月から8月にかけての紫外線量は年間で最も多く、特に午前10時から午後2時の時間帯は紫外線が最強になります。この時期に無防備に紫外線を浴び続けることで、秋口に抜け毛として症状が現れる「時間差ダメージ」が発生することもあります。
2.エアコンによる頭皮の乾燥と血行不良
現代の夏生活に欠かせないエアコンも、実は抜け毛の大きな原因の一つです。エアコンは室内の湿度を大幅に下げるため、知らず知らずのうちに頭皮が乾燥状態に陥ってしまいます。
頭皮が乾燥すると、皮膚が硬くなり柔軟性を失います。その結果、頭皮の血管が圧迫され、毛根に必要な栄養や酸素が十分に届かなくなります。髪の成長に必要な栄養供給が滞ることで、髪が細く弱くなり、最終的に抜け落ちやすくなってしまうのです。
特に、室内湿度が40%を下回る環境が長時間続くと、頭皮の乾燥は深刻化します。オフィスワークで一日中エアコンの効いた室内にいる方や、自宅でもエアコンを長時間使用している方は特に注意が必要です。
頭皮を触ってみて硬いと感じる場合は、乾燥による血行不良のサインかもしれません。
3.汗と皮脂の過剰分泌による毛穴詰まり
夏の高温多湿な環境では、汗と皮脂の分泌量が通常の2〜3倍に増加します。これらが混ざり合って毛穴に詰まることで、健康な髪の成長が阻害されてしまいます。
皮脂が毛穴に詰まると、毛根への栄養供給が妨げられるだけでなく、細菌の繁殖により頭皮の炎症が起こりやすくなります。特に、汗をかいた後に適切なケアを行わずに放置すると、皮脂が酸化して頭皮環境がさらに悪化します。これが続くと、毛穴周辺の組織が炎症を起こし、健康な髪が抜け落ちる原因となります。
また、夏場は帽子をかぶる機会も多く、通気性の悪い帽子を長時間着用することで頭皮が蒸れ、皮脂の分泌がさらに促進される悪循環に陥ることもあります。
汗をかいた日は、その日のうちに適切なシャンプーで毛穴の汚れを除去することが重要です。
夏の抜け毛メカニズム:なぜこの時期に集中するのか

動物の換毛期との関連性
人間の夏の抜け毛増加は、動物の換毛期と同じ生物学的メカニズムに基づいています。多くの哺乳動物は、季節の変化に応じて毛の密度や質を調整し、体温調節を行います。人間も進化の過程でこの機能を保持しており、現在でも季節による毛髪サイクルの変動が見られます。
動物の換毛期は主に春(3月)と秋(11月)に訪れますが、人間の場合は夏から秋にかけて(8月〜9月)に抜け毛のピークを迎えます。これは、暑い夏を乗り切るために体温を下げる必要があるためです。髪の毛が減ることで頭部の熱放散が促進され、体温調節に貢献しているのです。
この現象は世界各地で確認されており、気候に関係なく多くの人に共通して見られます。
つまり、夏の抜け毛は病気ではなく、人間が持つ自然な生体リズムの表れなのです。
ただし、現代社会では冷房の普及により体温調節の必要性が減っているにも関わらず、この生物学的サイクルは残っているため、多くの人が夏の抜け毛を経験することになります。
夏ダメージが秋に現れる時間差の仕組み
夏に受けたダメージが秋の抜け毛として現れるのは、髪の毛の成長サイクル(ヘアサイクル)に2〜3ヶ月の時間差があるためです。このメカニズムを理解することで、なぜ夏の終わりから秋にかけて抜け毛が増加するのかが明確になります。
髪の毛は「成長期(2〜6年)→退行期(2〜3週間)→休止期(2〜3ヶ月)」というサイクルを繰り返しています。
夏に紫外線や乾燥などのダメージを受けた髪は、すぐに抜け落ちるのではなく、まず退行期に移行し、その後休止期を経て抜け落ちます。7月に受けたダメージは9月頃に、8月のダメージは10月頃に抜け毛として現れるのが一般的です。
さらに、夏のストレス(暑さ、生活リズムの乱れ、食欲不振など)も抜け毛に影響します。これらのストレスによって成長期の髪が早期に退行期に移行してしまい、本来なら数年間成長するはずの髪が数ヶ月で抜け落ちてしまうのです。
このため、夏の生活習慣の改善は、秋の抜け毛予防にとって非常に重要な意味を持ちます。
今すぐ実践できる夏の抜け毛対策6つの方法

夏の抜け毛をできるだけ防ぐために、今日からできる対策を6つご紹介します。
- 帽子・日傘を活用した紫外線ダメージ予防
- 室内湿度40〜60%を保つ乾燥対策
- 正しいシャンプー方法で毛穴詰まりを解消
- 頭皮マッサージで血行促進
- 栄養バランスのとれた食生活
- 質の良い睡眠で成長ホルモン分泌を促進
1.帽子・日傘を活用した紫外線ダメージ予防
紫外線から頭皮を守る最も効果的で手軽な方法は、帽子や日傘を積極的に活用することです。
帽子を選ぶ際は、通気性の良い素材(綿、麻、ポリエステルメッシュなど)を選ぶことが必須です。通気性の悪い帽子を長時間着用すると、頭皮が蒸れて皮脂の分泌が増加し、毛穴詰まりの原因となってしまいます。また、つばが7cm以上ある帽子を選ぶことで、顔や首の日焼け防止効果も期待できます。
日傘の場合は、UVカット率が90%以上のものを選びましょう。晴雨兼用タイプなら急な雨にも対応でき、1年を通して活用できます。
外出時間が長い場合は、日傘と帽子を併用することで、より確実な紫外線対策が可能です。
2.室内湿度40〜60%を保つ乾燥対策
エアコンによる頭皮の乾燥を防ぐためには、室内湿度を40〜60%の適正範囲に保つことが重要です。湿度が40%を下回ると頭皮の乾燥が進行し、60%を超えると今度は細菌の繁殖リスクが高まるため、この範囲を維持することが理想的です。
湿度管理の方法
- 加湿器を併用することで、冷房効果を保ちながら適切な湿度を維持する
- 加湿器がない場合は、洗濯物を室内干しする、濡れたタオルを部屋に干す、観葉植物を置くなどの方法で湿度を上げる
- 冷房モードではなく除湿(ドライ)モードを活用し、過度な湿度低下を防ぐ
- 温湿度計を部屋に設置し、こまめに数値をチェックする習慣をつける
- 就寝時も湿度管理を忘れずに寝室の湿度にも注意を払う
3.正しいシャンプー方法で毛穴詰まりを解消
夏場の皮脂や汗による毛穴詰まりを効果的に解消するには、正しいシャンプー方法を実践することが不可欠です。間違ったシャンプー方法は、かえって頭皮を傷つけ、抜け毛を増加させる原因となってしまいます。
正しいシャンプーの手順
- シャンプー前にブラッシングを行い、髪に付着した汚れやほこりを事前に落とす
- 36〜38℃のぬるま湯で2〜3分間しっかりと予洗いを行う(汚れの約7割を除去できる重要なステップ)
- シャンプーは手のひらで十分に泡立ててから髪に付ける
- 指の腹を使って優しく頭皮をマッサージするように洗う(爪を立てて洗うのは絶対に避ける)
- 洗浄時間は2〜3分程度とし、その後しっかりとすすぐ
- リンスやコンディショナーは頭皮に付けず、髪の中間から毛先にかけてのみ使用する
- ドライヤーで素早く乾燥させ、雑菌の繁殖を防ぐ
4.頭皮マッサージで血行促進
頭皮の血行不良を改善し、毛根への栄養供給を促進するために、定期的な頭皮マッサージが非常に効果的です。1日5〜10分程度の簡単なマッサージでも、継続することで頭皮環境の改善が期待できます。
マッサージ方法
- 両手の指の腹を使って頭皮全体を優しく揉みほぐす
- 額の生え際から頭頂部に向かって、円を描くように指を動かしながら徐々に移動させる
- こめかみ部分や首の付け根は血行が滞りやすいため、重点的にマッサージする
- 強く押しすぎると頭皮を傷つけるため、「痛気持ちいい」程度の力加減を心がける
マッサージのタイミングは、シャンプー時、入浴後、就寝前などが効果的です。シャンプー時にマッサージを行う場合は、シャンプーの泡をクッション代わりにして摩擦を軽減しましょう。
頭皮マッサージ専用のブラシや器具を使用することで、より効率的にマッサージできます。ただし、硬い素材のブラシは頭皮を傷つける可能性があるため、柔らかいシリコン製のものを選ぶことをおすすめします。
5.栄養バランスのとれた食生活
健康な髪の成長には、適切な栄養素の摂取が欠かせません。特に夏場は食欲不振や偏った食生活になりがちですが、意識的に髪に良い栄養素を摂取することで、抜け毛の予防と改善が期待できます。
髪の主成分であるケラチンはタンパク質の一種であるため、良質なタンパク質の摂取が最も重要です。肉類、魚類、卵、大豆製品、乳製品などを毎食バランスよく取り入れましょう。また、タンパク質の合成を助けるビタミンB群(特にビオチン、B6、B12)、鉄分、亜鉛なども髪の健康に重要な役割を果たします。
夏バテで食欲がない場合でも、以下の食材を意識的に摂取することをおすすめします。
積極的に摂りたい栄養と食材
- タンパク質:鶏胸肉、サーモン、卵、豆腐
- 鉄分:レバー、ほうれん草、小松菜、ひじき
- 亜鉛:牡蠣、牛肉、かぼちゃの種、アーモンド
- ビタミンC:柑橘類、トマト、ピーマン、ブロッコリー
水分補給も忘れずに、1日1.5〜2リットルの水分を摂取し、血液循環を良好に保ちましょう。
6.質の良い睡眠で成長ホルモン分泌を促進
髪の成長に重要な成長ホルモンは、睡眠中、特に深い睡眠時に最も多く分泌されます。質の良い睡眠を確保することで、毛母細胞の活性化と健康な髪の成長が促進されるため、抜け毛対策において睡眠の改善は非常に重要です。
理想的な睡眠時間は7〜8時間とされていますが、時間だけでなく睡眠の質も重要です。深い睡眠を取ることで、成長ホルモンの分泌が最大化されます。夏場は暑さで寝苦しくなりやすいですが、エアコンや扇風機を活用して快適な睡眠環境を整えましょう。
睡眠の質を向上させるための具体的な方法
- 就寝前2〜3時間は食事を避ける
- 寝室の温度を25〜26℃に設定し、湿度を50〜60%に保つ
- スマートフォンやパソコンのブルーライトを就寝1時間前から避ける
- 規則正しい生活リズムを維持し、毎日同じ時間に就寝・起床する
夏場のストレスや生活リズムの乱れは睡眠の質を低下させ、結果的に抜け毛の増加につながります。涼しい環境での良質な睡眠を心がけることで、髪の健康維持に大きく貢献できます。
夏の抜け毛がなかなか改善しない場合の原因
季節性脱毛とFAGA(女性男性型脱毛症)の違い
夏の抜け毛が2〜3ヶ月経っても改善しない場合、季節性の抜け毛ではなくFAGA(女性男性型脱毛症)の可能性を考慮する必要があります。両者の違いを正しく理解することで、適切な対処法を選択できます。
季節性脱毛の特徴は、夏から秋にかけて一時的に抜け毛が増加し、通常1〜2ヶ月程度で自然に改善することです。抜け毛は頭部全体に均等に起こり、毛根がしっかりしている太い髪が抜けるのが一般的です。
一方、FAGAの場合は抜け毛が長期間続き、徐々に髪のボリュームが減少していきます。
FAGAは、ホルモンバランスの変化によってヘアサイクルが乱れる疾患です。通常2〜6年の毛根の寿命が数ヶ月から1年程度まで短縮され、髪が十分に成長する前に抜け落ちてしまいます。特に頭頂部や分け目部分の薄毛が目立ちやすく、抜ける髪が細く短いのが特徴です。
以下のチェックポイントに複数該当する場合は、医師への相談を検討してください。
チェックポイント
- 抜け毛が3ヶ月以上続いている
- 髪のボリュームが明らかに減少している
- 分け目が目立つようになった
- 細く短い髪が多く抜ける
ホルモンバランスの乱れによる影響
女性の抜け毛には、ホルモンバランスの変化が大きく関与しています。特に夏場は生活リズムの乱れやストレスにより、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が不安定になりやすく、これが抜け毛の長期化につながる場合があります。
エストロゲンは髪の成長を促進し、ヘアサイクルを正常に保つ重要な役割を果たしています。しかし、以下のような要因でエストロゲンの分泌が減少すると、髪が細くなり、抜けやすくなります。
ホルモンバランスを乱す主な要因
- 極端なダイエットや栄養不足
- 慢性的なストレス状態
- 睡眠不足や生活リズムの乱れ
- 更年期の前兆(プレ更年期)
- 過度な紫外線やエアコンによる身体的ストレス
特に30代後半から40代の女性は、プレ更年期によるホルモンバランスの変化と夏のダメージが重なることで、抜け毛が深刻化しやすい傾向があります。月経周期の乱れ、肌荒れ、イライラなどの症状と同時に抜け毛が増加している場合は、ホルモンバランスの乱れが原因である可能性が高いでしょう。
ストレスや生活習慣が与える追加要因
夏の抜け毛が改善しない場合、日常生活におけるストレスや生活習慣の乱れが追加的な悪影響を与えている可能性があります。これらの要因は単独でも抜け毛を引き起こしますが、夏の季節的要因と重なることで症状が長期化・深刻化することがあります。
慢性的なストレスは自律神経のバランスを崩し、血管の収縮を引き起こします。その結果、頭皮の血流が悪化し、毛根への栄養供給が不十分になります。
また、ストレスホルモン(コルチゾール)の過剰分泌により、髪の成長サイクルが乱れ、本来なら数年間成長するはずの髪が早期に抜け落ちてしまいます。
生活習慣面では、以下の要因が抜け毛の長期化に関与します。
抜け毛を悪化させる生活習慣
- 喫煙(血管収縮により頭皮の血流悪化)
- 過度の飲酒(栄養の吸収阻害)
- 偏った食事や過度なダイエット
- 運動不足による血行不良
- 頻繁なヘアカラーやパーマによる化学的ダメージ
これらの要因は相互に影響し合うため、一つずつ改善していくことが重要です。特に夏場は暑さによるストレスや食欲不振が加わるため、意識的に生活習慣の見直しを行う必要があります。
まとめ
夏に女性の抜け毛が増加するのは、多くの場合、自然な生理現象です。健康な女性でも夏季には抜け毛が1.5〜2倍に増加することが一般的であり、過度に心配する必要はありません。
抜け毛の主な原因は、強い紫外線による頭皮ダメージ、エアコンによる乾燥、汗と皮脂による毛穴詰まりの3つです。これらの要因を理解し、適切な紫外線対策、湿度管理、正しいシャンプー方法を実践することで、夏の抜け毛を効果的に予防・改善できます。
ただし、抜け毛が3ヶ月以上続く場合や、明らかな薄毛の進行が見られる場合は、季節性脱毛ではなくFAGAやホルモンバランスの乱れが原因である可能性があります。このような症状が見られる場合は、自己判断せずに皮膚科や抜け毛を専門とする医師に相談することをおすすめします。
今日からできる対策を継続的に実践し、健康で美しい髪を維持していきましょう。夏のダメージは適切なケアによって必ず改善できるため、諦めずに取り組むことが大切です。