この記事では、市販の育毛剤(医薬部外品)と発毛剤(ミノキシジル配合の一般用医薬品)の違いを明確にし、それぞれの成分が女性ホルモンに及ぼす影響と副作用のリスクを詳しく解説します。
正しい知識を身につけ、安心して薄毛対策を始めるための第一歩を踏み出しましょう。
「女性ホルモン配合育毛剤」の誤解と真実
女性ホルモンが大量に配合された育毛剤は存在しない
市販されている製品の多くは「女性ホルモンそのもの」を大量に配合しているわけではありません。まずはこの誤解を解消し、正確な知識を身につけることが安全な薄毛対策の第一歩です。
市販の医薬部外品育毛剤に配合されることがあるのは、エチニルエストラジオールという女性ホルモンに似た作用を持つ成分ですが、その量は体内のホルモンバランスに影響を与えるほどではありません。
医療機関で処方される女性ホルモン製剤とは全く異なるため、市販の育毛剤を使用して体内のホルモンバランスが大きく変化することはほとんどありません。
そもそも「育毛剤」と「発毛剤」は何が違う?
薄毛対策の製品には、大きく分けて「育毛剤」と「発毛剤」の2種類があります。この違いを理解しないまま製品を選ぶと、期待する効果が得られなかったり、思わぬ副作用に悩まされることがあります。
| 項目 | 育毛剤(医薬部外品) | 発毛剤(一般用医薬品) |
|---|---|---|
| 分類 | 医薬部外品 | 第1類医薬品 |
| 目的 | 抜け毛の予防・頭皮環境の改善 | 発毛・育毛・脱毛の進行予防 |
| 主な成分 | センブリエキス、ニンジンエキス、エチニルエストラジオールなど | ミノキシジル |
| 購入方法 | ドラッグストア等で自由に購入可 | ・薬剤師の説明を受けて購入 ・医療機関で処方を受ける |
| 効果 | 頭皮環境を健やかに保つ | 医薬品として認められた発毛効果 |
| 副作用リスク | 比較的低い | 育毛剤より高い |
育毛剤は「今ある髪を健やかに保つ」ことが目的で、厚生労働省が認めた有効成分を一定量配合した医薬部外品です。
一方、発毛剤は「新しい髪を生やす」ことを目的とした医薬品で、ミノキシジルという有効成分が配合されています。
みなさんが混同している製品の正体
みなさんが実際に気にされているのは、以下の2つの製品のいずれかである可能性が高いです。
医薬部外品の育毛剤(エチニルエストラジオール配合)
- ドラッグストアで購入できる
- 女性ホルモン様成分は極めて微量
- 副作用リスクは比較的低い
ミノキシジル配合の発毛剤(リアップ、リジェンヌなど)
- 薬剤師の説明を受けて購入
- 女性ホルモンには作用しない
- 頭皮トラブルなどの副作用がある
ここからは、育毛剤と発毛剤について、それぞれの特徴と副作用を詳しく解説していきます。
【医薬部外品】市販の育毛剤に含まれる女性ホルモン様成分
前述の通り、育毛剤に含まれる女性ホルモン様成分は極めて微量です。
ここでは、実際にどのような成分が配合されているのか、そして体への影響や副作用について詳しく解説します。
エチニルエストラジオールとは
市販の育毛剤に配合される代表的な成分がエチニルエストラジオールです。女性ホルモン(エストロゲン)に似た構造を持ち、頭皮環境を整えて抜け毛を予防する効果が期待されています。
ただし、配合量は医療用ホルモン製剤とは比較にならないほど微量で、体内のホルモンバランスに影響を与えるレベルではありません。
育毛剤の主な副作用
医薬部外品の育毛剤で起こりうる副作用は、以下の通りです。
| 副作用 | 原因 |
|---|---|
| 頭皮のかゆみ・発疹 | 配合成分やアルコールへの反応 |
| かぶれ | 肌に合わない、頭皮が敏感な状態での使用 |
| フケの増加 | 頭皮の乾燥、過度な使用 |
これらは女性ホルモン様成分そのものではなく、アルコールや添加物が原因となることが多いです。体内のホルモンバランスが乱れる、生理周期に影響が出るといった心配はほぼありません。
【医薬品】ミノキシジル配合の発毛剤は女性ホルモンに影響する?
前述した通り、ミノキシジルの発毛作用はホルモンに対する作用ではなく、毛包の活性化と血管拡張作用によるものです。医療機関で処方される一部の薄毛治療薬(フィナステリドなど)は男性ホルモンに作用しますが、ミノキシジルは全く異なるメカニズムです。
そのため、ミノキシジルを使用しても体内の女性ホルモン値が変化したり、ホルモンバランスが乱れることはありません。
ミノキシジルの作用メカニズム
ミノキシジルは、日本で一般用医薬品として女性の壮年性脱毛症に対して有効性が認められている成分です。
ミノキシジルの主な作用は以下の2つです。
- 毛包に直接作用し、細胞増殖を促進して発毛を促す
- 血管拡張作用により頭皮の血流を改善し、毛根に栄養を届ける
女性用のミノキシジル外用薬には、以下の選択肢があります。
| 入手方法 | 濃度 | 製品例・特徴 |
|---|---|---|
| 市販(薬剤師の説明が必要) | 1% | リアップジェンヌ、リジェンヌなど |
| 医療機関での処方 | 1〜5% | 患者様の状態に応じて濃度を調整 |
薄毛治療のガイドラインでは、日本皮膚科学会において、推奨度「A(行うよう強く勧める)」とされています。
ミノキシジルの主な副作用
| 部位 | 副作用 |
|---|---|
| 皮膚 | 頭皮の発疹・発赤、かゆみ、かぶれ、ふけ、使用部位の熱感 |
| 精神神経系 | 頭痛、気が遠くなる、めまい |
| 循環器 | 胸の痛み、心拍が速くなる |
| 代謝系 | 原因不明の急激な体重増加、手足のむくみ |
最も多い副作用は頭皮のかゆみや発疹ですが、重篤な副作用は報告されていません。
ただし、血圧に問題がある方や心臓・腎臓に疾患がある方は、使用前に必ず医師または薬剤師に相談してください。
育毛剤と発毛剤の副作用の違い
| 項目 | 医薬部外品の育毛剤 | ミノキシジル配合発毛剤 |
|---|---|---|
| 副作用の種類 | 主に頭皮トラブル(かゆみ・かぶれ) | 頭皮トラブル + 全身症状(動悸・めまい・むくみなど) |
| ホルモンへの影響 | ほぼなし | なし |
| 購入時の説明 | 不要 | 薬剤師の説明が必須 |
医薬部外品の育毛剤とミノキシジル配合発毛剤の副作用発現率に大きな差はありませんが、副作用の種類に違いがあります。
育毛剤は主に頭皮の軽度なかゆみやかぶれに留まりますが、ミノキシジルは頭皮症状に加えて、まれに動悸やめまい、むくみといった全身症状が報告されています。
どの製品を選ぶべき?
手軽にケアを始めてみたい場合は
- 医薬部外品の育毛剤から始める
すでに薄毛が進行している場合は
- ミノキシジル外用薬が推奨される
- ただし薬剤師・医師の説明を受け、副作用を理解した上で使用
いずれの製品も効果が見られない場合は
- 医療機関での相談を推奨
- ミノキシジル+内服薬や注入治療を検討
市販品で対応できる範囲には限界があります。3〜6ヶ月使用しても改善が見られない場合や、薄毛が急速に進行している場合は、医師に相談することをおすすめします。
育毛剤・発毛剤の使用を避けるべき人・注意が必要な人
育毛剤や発毛剤は誰でも使用できるわけではありません。特定の条件に該当する方は、使用を避けるか、医師・薬剤師に相談する必要があります。
妊娠中・授乳中の女性
妊娠中・授乳中の女性は、ミノキシジル外用薬の使用ができません。
妊娠中や授乳中は、体内のホルモンバランスが大きく変化する時期であり、胎児や乳児への安全性が確認されていないためです。医薬部外品の育毛剤についても、妊娠中・授乳中の使用は推奨されていません。
産後の抜け毛(産後脱毛症)は、多くの場合、出産後半年〜1年で自然に回復します。どうしても気になる場合は、産婦人科医に相談してください。
未成年者(20歳未満)
ミノキシジル外用薬は、20歳未満の方は使用できません。
国内での使用経験がなく、安全性が確認されていないためです。未成年の薄毛は、栄養不足、ストレス、ホルモンバランスの乱れなど、他の原因が考えられるため、まずは皮膚科を受診することをおすすめします。
既往歴がある方
以下に該当する方は、使用前に必ず医師または薬剤師に相談してください。
相談が必要な方
- 高血圧または低血圧の方
- 心臓または腎臓に障害がある方
- むくみがある方
- 甲状腺機能障害(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)の診断を受けている方
- 65歳以上の高齢者
- 今までに薬や化粧品などでアレルギー症状を起こしたことがある方
使用できない方
- ミノキシジルや配合成分によりアレルギー症状を起こしたことがある方
- 壮年性脱毛症以外の脱毛症(円形脱毛症、甲状腺疾患による脱毛など)の方
- 脱毛が急激であったり、髪が斑状に抜けている方
- 頭皮に傷、湿疹、炎症(発赤)がある方
ホルモン治療を受けている方
現在、ホルモン補充療法やピルを服用している方は、育毛剤・発毛剤の使用前に医師に相談してください。
医薬部外品の育毛剤に含まれる女性ホルモン様成分は極めて微量ですが、念のため確認することをおすすめします。ミノキシジルは女性ホルモンに影響しないため、基本的には併用可能ですが、総合的な判断は医師に委ねるべきです。
安全に使用するための4つのポイント
副作用のリスクを最小限に抑えながら、効果的な薄毛対策を行うための方法を解説します。
ポイント1: 医薬品か医薬部外品かを確認する
購入前に、製品が「医薬品」なのか「医薬部外品」なのかを必ず確認しましょう。
- 医薬部外品(育毛剤): ドラッグストアで自由に購入可能
- 第1類医薬品(ミノキシジル配合発毛剤): 薬剤師の説明を受けて購入
ミノキシジル配合の発毛剤は第1類医薬品のため、購入時に薬剤師から使用方法や注意事項の説明を受けることが義務付けられています。
なお、皮膚科や薄毛専門のクリニックでもミノキシジルを処方しているため、医師から処方してもらうことも可能です。
ポイント2: 自己判断せず医師や薬剤師に相談する
以下の場合は、自己判断で使用を開始せず、必ず医師または薬剤師に相談してください。
- 既往歴がある方(高血圧、心臓疾患、腎臓疾患など)
- 他の薬を服用中の方
- 初めて薄毛対策をする方で不安がある方
- 薄毛の原因がわからない方
薄毛の原因が壮年性脱毛症ではなく、甲状腺疾患や円形脱毛症などの場合、育毛剤や発毛剤では効果が得られません。
ポイント3: 低濃度・低刺激製品から始める
初めて発毛剤を使用する場合は、女性用のミノキシジル1%製品から始めることが推奨されます。
男性用の5%製品は女性には濃度が高すぎるため、副作用のリスクが高まります。「濃度が高い方が効果がある」と考えて男性用を使用するのは危険です。
クリニックであれば、医師の診察のもと高濃度を処方する場合があります。1%濃度で効果が出なかったという方は自己判断で使用せず、一度クリニックに相談してみましょう。
医薬部外品の育毛剤も、アルコールフリーや無添加タイプなど、刺激の少ない製品を選ぶと安心です。
ポイント4: 使用前後の状態を記録する
育毛剤や発毛剤を使用する前に、以下を記録しておくと副作用の早期発見に役立ちます。
- 頭皮の写真を撮影(分け目、つむじなど)
- 体調の記録(血圧、体重、生理周期など)
- 抜け毛の量(シャンプー時の抜け毛本数の目安)
使用開始後も定期的に記録し、異常があればすぐに医師や薬剤師に相談できるよう準備しておきましょう。
市販品で効果がない場合はクリニックへ
市販の育毛剤や発毛剤を3〜6ヶ月使用しても効果が見られない場合、または薄毛が急速に進行している場合は、医療機関での治療を検討しましょう。
クリニックで受けられる女性の薄毛治療
医療機関では、市販品では対応できない効果の高い薄毛治療が可能です。
クリニックでの治療の特徴
- 医師による診察と原因の特定
- 患者の状態に合わせた治療プランの提案
- 定期的な経過観察と治療内容の調整
- 副作用が出た場合の迅速な対応
内服薬による治療
体の内側から薄毛にアプローチする治療法です。

これらの内服薬は、医師の処方が必要であり、定期的な血液検査などで副作用を監視しながら使用します。
外用薬による治療

クリニックで処方されるミノキシジル外用薬は、市販品とは濃度や配合成分が異なる場合があります。
患者の頭皮の状態や薄毛の進行度に応じて、適切な濃度の製品が処方されます。医師の管理のもとで使用するため、副作用が出た場合もすぐ相談でき安心です。
注入治療

発毛成分を直接頭皮に注入する治療法で、内服薬や外用薬で効果が不十分な場合に有効です。
複数回の治療が必要ですが、内服薬や外用薬と併用することで、より高い効果が期待できます。
当院では、患者様の症状や生活スタイルに合わせた最適な治療プランをご提案しています。まずは無料カウンセリングでお気軽にご相談ください。
※これらの治療はすべて自由診療となり、保険適用外です。
※授乳中には服用できない薬剤もありますので、診察時に必ず申告ください。
育毛剤と女性ホルモンに関するよくある質問
育毛剤や発毛剤について、多くの方が抱える疑問にお答えします。
-
市販の育毛剤で女性ホルモンが増えることはありますか?
-
市販の育毛剤で体内の女性ホルモンが増えることはありません。
医薬部外品の育毛剤に配合される女性ホルモン様成分(エチニルエストラジオールなど)は極めて微量であり、頭皮環境を整える目的で使用されています。
体内のホルモンバランスに影響を与えるレベルではないため、生理周期が乱れる、体調が変化するといった心配はほぼありません。
-
更年期の薄毛にはどの治療が適していますか?
-
更年期の薄毛には、クリニックでの総合的な治療がおすすめです。
更年期による薄毛は、女性ホルモンの減少が主な原因です。市販のミノキシジル外用薬も有効ですが、ぜひクリニックも有効活用してください。
専門的な知見のもと、あなたにあった適切な治療が受けられるはずです。
-
男性が女性用育毛剤を使っても問題ない?
-
使用自体は可能ですが、期待した効果が得られない可能性があります。
女性用の育毛剤や発毛剤は、女性の薄毛の原因に合わせて設計されています。
また、同じミノキシジルでも濃度が異なります(女性用1%、男性用5%)。男性が女性用を使用しても副作用のリスクは低いですが、発毛効果も限定的となることがあります。男性は男性用の製品、または医療機関での治療を検討してください。
まとめ
「育毛剤は女性ホルモンに影響があるのではないか」という不安をお持ちの方は多いですが、市販の育毛剤や発毛剤が体内のホルモンバランスに大きな影響を与えることはほとんどありません。
薄毛の悩みは一人で抱え込まず、正しい知識を持って適切な対策を行うことが大切です。市販の育毛剤や発毛剤で不安がある場合、または効果が得られない場合は、専門医に相談することをおすすめします。
当院では、女性の薄毛に特化した治療を行っており、患者様一人ひとりの症状に合わせた最適な治療プランをご提案しています。まずはお気軽にご相談ください。
【参考】
【国内未承認治療に関する情報提供】
一部の薄毛治療は、日本国内では未承認ですが、自由診療として受けていただくことが可能です。
1. 本治療は国内未承認です 「ミノキシジル内服薬」「メソセラピー」「HARG療法」「スピロノラクトン」「パントガール」は、日本国内において医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく承認を受けていません。
2. 入手経路について 当院では、海外の医薬品販売業者やメーカーから、正規の流通ルートを通じて医薬品・治療材料を輸入し、適切な管理のもとで患者様に提供しています。
3. 国内の同等の承認治療の有無
- ミノキシジル内服薬:日本国内では、ミノキシジル外用薬(リアップ®など)が承認されていますが、内服薬は未承認です。
- メソセラピー・HARG療法:日本国内で承認された同等の治療法は存在しません。
- スピロノラクトン:日本国内では「抗高血圧薬」「利尿薬」として承認されていますが、薄毛治療目的での使用は未承認です。
- パントガール:日本国内では承認されておらず、同等の承認治療薬もありません。
4. 安全性・有効性の評価状況 本治療は、日本国内での安全性・有効性が確立されておらず、公的な評価を受けておりません。そのため、副作用やリスクについて十分にご理解いただいた上で、治療を受けていただく必要があります。
5. 諸外国での使用状況
- ミノキシジル内服薬:米国、欧州などの一部の国では、医師の処方により使用されています。
- メソセラピー・HARG療法:一部の国において美容医療・薄毛治療の分野で施術が行われています。
- スピロノラクトン:米国などでは、女性の薄毛治療に対して医師の処方により使用されることがあります。
- パントガール:ドイツをはじめとする一部の国で「女性の薄毛(びまん性脱毛症)のためのサプリメント」として販売されています。
6. 医薬品副作用被害救済制度
日本国内において未承認の医薬品・治療法は、厚生労働省の「医薬品副作用被害救済制度」の対象とはなりません。
⚠ 注意事項
- 本治療は自由診療(自費診療)であり、健康保険の適用はありません。
- 効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。